印中の微妙な関係について話すヴァルマ大使

印中の関係について話すヴァルマ大使

【インドと日本、両国にとって気になるのは、隣国である大国、中国の存在だろう。特にインドは、国境問題をめぐり40年以上にわたって中国との間に緊張状態が続いている】

池上:最近気がかりなのは、インド国内でTikTokの使用を禁止したり、あるいは国境を巡って中国と紛争になったりと、中国との関係が非常に悪化していることです。人口13億を超える2つの大国が対立するということは世界平和にとってけっして好ましいことではないことではない。非常に懸念しているのですが、大使はどうお考えですか?

ヴァルマ大使:中国とインドは長年、共存してきました。ですので二国間には、国際社会が心配するような問題はありません。両国間には紛争がありましたし、1962年には戦争も起こりました。両国の軍隊が戦闘に入った理由は、実際の土地に、これが国境であるという線引きがないからです。あるのは「実効支配線」として知られるものです。そしてこのラインを越えると、背中をたたかれて戻るように言われます。それで戻るということが、毎年200回以上起こっていたのです。

 今回、衝突が起こりましたが、何が違うかというと、中国の人民解放軍が一方的に現状を変えようとしたこと。それが最大の問題でした。中国もインドも大きな軍事力を保持しています。愛国心から来るナショナリズムの熱狂があると、物事は間違った方向に進み始めることがあります。実際に20名の兵士が中国人民解放軍によって殺されました。これは受け入れがたいことです。国境線での出来事を脇に置いて、「すべてうまくいっています」などと言うことはできません。どんな関係も、さまざまな関係の積み重なりでできています。その積み重なりが、この5月から悪化しているということです。現段階では両国間での信頼のレベルをダウンさせるほどの悪化です。率直に言って、両国の関係が5月以前の時期よりも悪いことは確かです。それ以降、双方がさまざまなアクションを取る可能性がありました。

 TikTokの問題は国境問題ではなく、プライバシーや安全性の問題です。このアプリは今インドでは使用できないようにしています。提供元にはすでに問題点を伝えました。セキュリティ問題に迅速に対処してもらえれば、私たちも今の状況を再考します。

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