大阪市を廃止して、現在の24区を4つの特別区「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」に再編する大阪都構想。11月1日には、その是非を問う住民投票が実施される。
市民が都構想への賛否を判断する材料となるのが、府議会や市議会で承認された「特別区設置協定書」だ。そこには、こう書いてある。
〈大阪市が実施してきた特色ある住民サービスについては、その内容や水準を維持するものとする〉
賛成派と反対派の間で最も議論が分かれるのが、住民サービスが低下するか否かだ。反対派の自民・川嶋広稔市議が訴える。
「大阪市は最大の政令指定都市であるスケールメリットを活かして効率的に財政運営をしていた分野もある。それを単純に4分割すれば、スケールメリットの“旨み”を失い、事務費などの基本的な経費支出が増えることになる。
また、住民サービスを維持するために自治体の税収だけでは足りない場合、これまでなら国から地方交付税を受け取ってサービスの質を保っていたが、都構想可決後の4特別区では府にまとめて交付されるため、各特別区が自由に使えなくなる。
結果、私たちの試算では4特別区で200億円の負担増になり、住民サービスを削減せざるを得なくなる恐れも出てくる」
大阪府・市は特別区設置から15年間の財政シミュレーションを公表している。それによると4特別区は赤字にはならないものの、9月の臨時市議会で、市民プールや老人福祉センターなど17億円分を縮小・削減すると判明した。
「大阪市独自の『敬老パス』、『塾代助成』、『給食費無料』、『18歳以下の医療費助成』なども、サービスがいったん継承されたとしても、特別区の財政状況次第ではカットされる恐れがある」(川嶋氏)
「敬老パス」とは、地下鉄やバスの敬老優待乗車証のこと。70歳以上を対象に1回50円で利用できるサービスだ。
「年金も減らされて、敬老パスまでなくなったら美術館巡りもできへん。勘弁してほしい」(80代平野区民男性)