全社がリモートワークに切り替わったのに、書類に印鑑を押すための「ハンコ出社」が残り「結局、週の半分は出社している」とのぼやきが聞こえてきたのは、5月ごろだっただろうか。そのハンコをなくそうと政府が本腰を入れ始め、まず河野太郎行政改革担当大臣が、行政手続きのハンコを9割以上廃止できると会見で明らかにした。ところが、趣味の世界でハンコは存在感を増しつつある。10月には3刷りが決まった「鉄印帳」について、ライターの小川裕夫氏が好調の背景をレポートする。
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9月16日に発足した菅義偉内閣で行政改革を担当することになった河野太郎大臣は、就任早々からハンコの廃止を表明した。
契約や何かの手続きで必ず求められるハンコ、つまり印鑑を押す行為は、長らく続いてきた日本の慣習でもある。新型コロナウイルスの感染が拡大した折には、多くの企業が在宅ワークを導入。自宅で仕事をする会社員が一気に増えた。
こうした社会的な背景から確実にテレワークは拡大しているが、その一方で中間管理職からは「書類にハンコを押すためだけに出社する」といった、馬鹿馬鹿しいような話も聞こえてきた。日本が大事に守ってきたハンコ文化だが、確かに時代に適っているとは言い難い。そんな機運から河野大臣のハンコ廃止は時宜を得た政策と言えるだろう。
そうしたハンコ廃止の流れは今後も加速するだろうが、趣味の世界に目を転じればハンコは決して廃れていない。
新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道各社は大幅に業績を悪化させている。いまだコロナ収束は見通せないが、そうした苦境の中で40の鉄道会社が協力して鉄道版御朱印帳ともいえる「鉄印帳」を7月10日から開始した。
鉄印帳は、開始直後から鉄道ファンを中心に話題を呼ぶ。まもなく企画スタートから3か月を迎えるが、その勢いは衰えることを知らない。
「第三セクター鉄道等協議会の会員である熊本県人吉市や球磨郡を走るくま川鉄道の永江友二社長が、家族との会話からヒントを得て、御朱印帳の鉄道版企画を事務局に提案したことが鉄印帳誕生のきっかけです。同役員会で協議を重ね、全会員が連携する新しい試みとして実施を決定しました」と話すのは、読売旅行総務人事部兼CSR推進室の担当者だ。