オンラインライブでは日本語、英語、中国語などの字幕がついたり、メンバー人数分以上の複数のカメラ台数で撮影されるので、ファンは自由にカメラ設定を選択できる。これは特に大人数グループのファンには大きなメリットで、推しメンバーにフォーカスしたり、引きでステージ全体を楽しめたり、ある意味夢のような体験だ。
4月末にK-POPで最初のオンライン公演を行ったSMは、韓国最大手のインターネット検索ポータルサイト・NAVERと提携して、SUPER Mから始まり東方神起やSUPER JUNIOR、NCT127などの有料オンラインライブを8月までに7回開催した。
全世界同時生中継で世界中のファンが同時につながる迫力と、拡張現実(AR)による仮想空間や、事前に選ばれたファンとアーティストが直接交流したり、チャット機能もライブ進行と同時に楽しむことができるなど、オンラインならではの醍醐味で世界中のファンを歓喜させた。
通常の公演同様、オンライン公演用のグッズ販売も行い高い収益を得ており、制作費や出演料などを除いても、通常の公演以上の利益を生み出すことができる新たな可能性を見出した。
驚くべきスピード感と、逆境を逆手に取る柔軟性こそが、韓国エンタメの大きな特徴と現在の世界的ブームの要因ともいえるだろう。SM側も「新しい公演文化の始まり」と自信を見せている。
政府がオンライン公演専用スタジオを設立
9月7日の聯合ニュースによると、BTSや東方神起などのオンライン公演の成功を受けて、このようなオンラインライブを簡単に実施することができない中小規模の事務所所属のアーティストのために、韓国政府が予算を投じ、K-POPオンライン公演専用のスタジオを設立するという。
オンライン・非対面での韓流拡散に関連した予算を今年度の4億ウォン(約3600万円)から21年度は340億ウォン(約31億円)に大幅増額し、うち290億ウォン(約26億円)を投じてK-POPオンライン公演のスタジオを設立する。国をあげてここまで韓流コンテンツを支援する体制に他国はかなわないだろう。
◆取材・文/田名部知子