アメリカ大統領選挙はバイデン氏がリードを広げている。それでも陣営は、毎日のように大量のメールを支持者に送り付け、小口献金をねだっている。そこには、歪み始めた民主党の苦悩がにじみ出ているのだという。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。
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筆者のメールアプリの受信欄は、バイデン事務所とその一派からの支持と寄付金をねだるメールでいっぱいである。毎日10通は軽くある。正直言って迷惑である。もちろん彼らも無差別に送っているわけではなく、筆者が彼らのサイトやメールマガジンなどに登録したからではある。それらを退会すればメールも止まるだろうが、大統領選挙の動きを把握しておきたいから、今はそれはできないのだ。かくして、毎日「寄付を」「投票を」とメール攻勢を受けることになる。そのしつこさには脱帽するし呆れる。
様々な世論調査の結果を集め、独自に平均値を算出しているReal Clear Politicsによれば、全国平均でも激戦州でも、バイデン氏は安定したリードを築いている。
全国平均:51.3対42.3(バイデン対トランプ。以下同)
激戦州平均:49.4対44.5
フロリダ州:48.5対45.8
ノースカロライナ州:48.9対45.6
ペンシルベニア州:50.8対43.8
ウィスコンシン州:49.9対43.6
ミネソタ州:47.3対40.7
アリゾナ州:48.5対45.5
トランプ氏が勝つためには、これらの選挙区をほぼ全部ひっくり返す必要があるが、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミネソタなどは差が開いている。今からトランプ氏が逆転を狙っても常識的には不可能なリードである。バイデン陣営がメール作戦で一人25ドルとか50ドルずつかき集めようとしているのが滑稽にも見える。あまり品のいいメールではないから、あれでバイデン氏に悪い印象を持つ有権者も少なくないと思うのである。
長年の友人で元民主党コンサルタントのK氏と電話で話した。率直に質問した。「バイデン陣営からの寄付集めメールは、みっともない印象がある。勝利に近づいている候補にしては余裕も品格も感じない」と言うとK氏は、「ここ25年ほどで民主党は大きく変わった。有権者全体の中心層から支持層が徐々に外れている。それが寄付集めや様々なキャンペーン戦略にも影響している」と答えた。「つまり左に寄っているから資金集めも草の根でやる必要があるということか」と問うと、「そうだ。若い党員が増えて、徐々に左寄りになってきた。そういう層から少額ずつ寄付を集める必要がある」と内情を説明した。