注目を集める偉大な米ドラマのリメイク版、ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所の山下柚実氏が分析した。
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10月9日、鳴り物入りでスタートした『24 JAPAN』(テレビ朝日系金曜23時15分全24話)。超がつくほど人気だったオリジナルドラマ『24 -TWENTY FOUR-』の日本版リメイクを作るなんて。すごい自信とその意欲は見上げたものです。
ご存じの人も多いと思いますが、オリジナルは2001年、アメリカで放送が開始されると世界的大ヒットになりました。作品の衝撃は凄まじく、「続きが気になって仕方がない」「仕事を休んでも観る」と中毒症状を引き起こし、1シーズン24時間イッキ見する人も現れた。日本でアメリカの連続ドラマ人気に本格的に火を点けた作品とも言われました。
映像の楽しみ方にも新たなスタイルを生み出しました。物語は展開が早く、次が気になる。視聴者はうかうかとトイレにもいけない。のんびり「ながら見」する空間だった「お茶の間」はまるで映画館か劇場のように集中して視聴する空間へと変容したのでした。
独特な緊張感をまとった『24 -TWENTY FOUR-』。主人公はアメリカ連邦機関CTU(テロ対策ユニット)の捜査官ジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)。凶悪なテロ事件と戦う姿を、1話1時間で進行し24エピソード24時間で1シーズン完結という斬新なスタイルを採用。画面を多分割し同時に起こっている複数の出来事を描くスプリット画面やドキュメンタリーのような生々しい映像。画面に表示されるデジタル時計の一秒一秒が、ドックン、ドックンという心臓の鼓動とも重なりあって緊張感を高める仕掛けが秀逸でした。
映画とドラマの位置取りにも変化が生まれました。20年近く前、テレビドラマは映画よりも格下という雰囲気がなくはなかった。それに対してこの作品は「ハリウッド映画と肩を並べる」と賞賛を集め、連続ドラマの地位を推し上げることにも一役買いました。
で、日本で始まったリメイク版はどうなのか?
「米国初アフリカ系アメリカ人大統領が誕生するまでの24時間」は、「日本初の女性総理が誕生するまでの24時間」に置き換えられ、第1話が放送されると……。
「ゴージャス感が足りない」「作りが安っぽ過ぎる」「ビルをよじ登ったり高い壁を超えたりするアクションがもの足りない」「経過していくタイム音がオリジナルと違う」「特撮ものにしかみえない」「仲間由紀恵が総理大臣候補に見えず仲間由紀恵そのもの」などなど、オリジナルとの違いを指摘する酷評が噴き出した。
コアなファンにとっては、たしかに本家と比較してダメを出したくなる気持ちもわからなくない。しかし冷静に考えると……アメリカ版と比較するのは詮無い話。仮に、「比較」を離れてみたら? オリジナルから重要な要素をいくつか採り入れた、別のドラマとして見たら? オリジナルを見ていない人にとってはどう映ったのか? あるいは日本の他のドラマと比較してみると……?