無敗の3冠がかかるレース、競馬ライターの東田和美氏は「血脈」に注目した。
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今年の3歳が初年度産駒のエピファネイアは、当初からサンデーサイレンスの孫、つまりディープインパクトやハーツクライ産駒の優秀な牝馬につければ、生まれてくる子は4×3、つまりサンデーサイレンスの「奇跡の血量」を持つことになると話題になっていた。日本競馬を変えた大種牡馬が旅立って18年、ついにそんな時代になったのだ。
「奇跡の血量」を持ってこれまで秋華賞に出走してきた馬はこれまでも何頭かいる。2017年のミリッサ(8着)、ヴゼットジョリー(11着)、レーヌミノル(14着)がいずれもHaloの血が18・75%、2016年のレッドアヴェンセ(5着)はLyphardの、2015年のトーセンビクトリー(8着)はNureyevの、レッツゴードンキ(17着)はMr. Prospectorの「奇跡の血量」を持っていた。また2013年に15番人気で3着に激走したリラコサージュはHail to Reason(Haloの父)の3×4だった。
勝ち馬では2008年に11番人気だったブラックエンブレムがMr. Prospectorの3×4だが、3歳牝馬GⅠが一筋縄ではいかないと最初に印象付けたのが第4回(1999年)のブゼンキャンドル。ローズS3着でようやく出走権を獲得して12番人気で勝ち、2着にも10番人気馬が入って馬連が9万4360円もついた。この馬の父がモガミ、母の父アスワン、その父ノーザンテースト。日本でおなじみの種牡馬による配合だが、つまりはNorthern Dancerの3×4だ。10番人気以下で勝ったのは3頭しかいないが、そのうち2頭が「奇跡」を持つ馬だった。
ということで、秋華賞ではこれからの時代を支配していくであろう「サンデーの奇跡」に敬意を表する。無敗の3冠がかかるデアリングタクトは最後の直線での脚が凄まじいが、2冠は阪神外回りと東京、さらにその前のエルフィンSも京都競馬場の外回りだった。京都の内回りは直線が328mしかなく、ある調教師が「くるくる回る感じ」という言い方をしているコース。当然、先行勢が有利と言われており、仕掛けどころがカギとなる。「史上初」の重圧は半端なものではないはずだが、松山騎手は今年単勝1倍台の1番人気馬に13回騎乗していて6勝、着外がなく堅実だ。
同じエピファネイア産駒のムジカはサンデーだけではなく、Sadler’s Wellsの「奇跡」も兼ね備えている。実績的には物足りないが、ブゼンキャンドルのように大舞台でその血が爆発することがないだろうか。
余談だがクラヴェルの除外は残念。母と祖母がともに重賞3勝というバリバリのサンデー系エリート。よくなるのは古馬になってからとのことで、トライアルを使わなかったが、このパターンが「奇跡」のスタンダードになっていきそうだ。
G1馬ブラストワンピースの半妹ホウオウピースフルはオルフェーヴル産駒だが、祖母の父がフジキセキ。1歳上の姉ヴィクトリアピース共々、サンデーの「奇跡」の持ち主だ。父オルフェーヴルもノーザンテーストの「奇跡」を持っている。
前走の大敗は気がかりだが、ブラックエンブレムもローズS15着で人気を落としていた。新馬戦ではミヤマザクラを破り、フローラSでは、ウインマリリンと同タイム。そして現在5連勝中のノーザンファーム生産馬だ。