「学び」「学習」と聞いて、学生時代、試験のために詰め込んだ勉強を思い浮かべてはいけない。知識や技能の習得だけでなく、それらを得る過程で好奇心がどんどん湧いて、心身ともに活気があふれる。その成果を社会のために生かせるのもまた学びの喜びだ。
そんな趣旨で、高齢者を対象にした生涯学習事業を行う高齢者大学・老人大学・シルバーカレッジなどと呼ばれる“学校”が全国各地にある。
主に自治体や社会福祉団体、公益法人などが主管だが、法令による規定はなく、規模やカリキュラムもさまざま。なかでも認定NPO法人大阪府高齢者大学校は今年2875名もの“熟年新入生”が入学。コロナ禍で中止していた講義が9月に再開すると、ほとんどの学生がコロナに負けず喜んで通って来ているという。その学びへの意欲、高齢者が学ぶ意義を、理事長・和田征士さんに聞いた。
「コーダイ(認定NPO法人大阪府高齢者大学校の愛称)は定期テストも卒論もありません。それでは何のために学んでいるのか。それは“もっと知りたい”“もっと深めたい”からです」と言う和田さん。
今年創立12年目のコーダイは、前身が30年もの歴史があった大阪府老人大学。行財政改革で一度は廃校になったが、多くの修了生らが中心になってNPO法人を立ち上げ、再生させた経緯がある。学ぶことのすばらしさに共感するボランティアによって、すべて運営されている。それほど高齢者にとって学ぶ場所は重要で、学びたい意欲は力を湧かせるのだ。
本科のカリキュラムは、歴史、大阪再発見、語学交流、美術・芸術、パソコンほか11分野52科目も。また京都大学、大阪大学、大阪芸術大学、大阪体育大学など多数の有名大学から講師陣を招いている。
「歴史は定番人気ですね。時系列で学ぶ科目、偉人や戦国武将などテーマごとに横断的に学ぶ科目など、いろいろな角度からじっくり取り組める。大阪再発見は大阪の史跡探訪。地元を学び直すわけです。
また音楽分野のボイストレーニング科やスポーツ健康分野のアウトドア科など、体を動かす実践的な科目も人気。仕事でずっと理系だったので文学の世界をのぞきたい。憧れだった美術に初挑戦!という人も。皆さん実に自由に学びを楽しんでおられます。いずれも学生時代の勉強とは違っていわば趣味深耕。でもそれが大事なのです。学ぶとは自分の好きなことを掘り下げる、興味あることに挑戦することなのですから」
学生時代の試験、現役時代の経済活動からも解放され、自由な時間がたっぷりある高齢者。それゆえ何をしてよいかわからなくなる人もいるというが、気持ちを切り替え、 自分の興味と向き合ってみてほしいと和田さんは言う。
「年は取っても知りたい、深めたいという気持ちは廃れません。むしろベースに人生経験があり、じっくり取り組む時間がある分、高齢期は学ぶのに最適なのです。講座は1年間。不思議と皆さん、入学時より卒業時の方が若返っている(笑い)。学ぶことは健康づくりにもなるのです。そしてどんどんおしゃれになります」