10月1日、政府は性暴力やドメスティックバイオレンス(DV)の対策強化のために内閣府に「男女間暴力対策課」を新設した。しかし、性暴力やDVは決して「男女間」だけのものではない。このたび『虹色チェンジメーカー』を上梓したLGBTの人々が働きやすい職場づくりを支援するNPO法人「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀氏と、ジェンダー問題に詳しいジャーナリスト・治部れんげ氏が語り合った。
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村木:政府は10月1日、DVや性暴力への対策を強化するため、内閣府に設置されている「暴力対策推進室」を格上げし、「男女間暴力対策課」を新設しました。そのこと自体は素晴らしいのですが、名前がショックで。
治部:「男女」っていう点ですよね。
村木:そうなんです。「男女」という名前をつけられた時点で、「自分はそこにはまらない」と思う人たちが出てくる。ハードルが高い機関になってしまいます。LGBTは結構深刻なDVの被害に遭っている方も多いんですが、「男女」と言われると申告がしにくくなってしまうのではないかと危惧しています。ただでさえ被害に遭っていることを外から発見するのは難しいのに……。
治部:私はこのDVや性暴力とその対策に関しては、結構、取材をしたり原稿を書いたりしてきました。「男女間」になったことについては、そうじゃないっていう声も関係者の中ではあったんですけどね……。今、刑法の性犯罪規定をさらに見直していますし、性教育に関しても立案に向けて動いていて。数少ない女性閣僚の一人である上川陽子法務大臣は、ずっと性犯罪のことに真面目に取り組んでいて、「Spring」という被害者団体と連携して議連をつくって。この問題が進むんじゃないかっていう期待感がある中でのこの課の名前っていうのは、やはり残念だなと思いました。
村木:刑法の見直しについて言うと、これは3年前に「強姦罪」が改められて男性への性暴力も取り締まる「強制性交等罪」となったときに「3年ごとの見直し」規定が設けられて、今それをやっているところです。女性間でもDVは起きますし、男性器だけじゃなく手指や器具も含めるよう、要望が出されています。
治部:性的マイノリティの実情に即してください、ということですね。
村木:それから今、自殺が増えているという問題で、自殺の調書で警察がチェックをつける「経済問題」などの項目の中に「男女問題」もあるんです。でもじゃあLGBTはどうなるのか?と。LGBTの自殺率の高さは以前から指摘されていたのに、肝心の自殺の統計ではわからない。