終わりの見えないウィズコロナ時代が到来し、程度の差こそあれ、社会人や学生の在宅ワーク・スタディは定着しつつある。だが、ここにきて“リモート疲れ”が限界に達している人も多いという。その根本的な要因はどこにあるのか。同志社大学政策学部教授の太田肇氏がレポートする。
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新型コロナウィルス対策としてリモートワークが取り入れられるようになって半年がたつ。「満員電車で通勤しなくてもよい」「いやな上司と顔を合わせなくてもよい」「子どもの世話をしながら仕事ができる」等々、当初は歓迎する人が多かった。
大学も大半が4月からオンライン講義に切り替えたが、最初のうちは学生からも「実家で暮らせる」「朝寝坊ができる」という声がたくさん聞かれた。
ところがリモート生活が1、2か月たったころから、「早く出社したい」「大学に行きたい」という声が徐々に大きくなった。そして夏を迎えるころになると、リモートの生活に疲れやストレスを訴える人が増えてきた。それはコロナ禍前の定番だった遠距離の通勤・通学、仕事やアルバイトによる疲労、人間関係のストレスなどとは違うタイプの疲れだ。
毎朝「涙が止まらない」学生も
在宅勤務を続ける人たちは、「密室の中で一日中、監視されている気がする」とか、「自分の仕事が上司にどう受け止められ、評価されているかわからない」といった不安を口にする。「同僚が何をしているか気になって仕方がない」という人もいる。しかし不満があっても愚痴を聞いてくれる人がそばにいないし、不安を感じても相談する相手がいない。
そのうえ一日中、家の中にいると精神的なストレスが溜まるし、家族との人間関係がギクシャクしてくることもある。それでも時々外で会食したり旅行に行ったりできればストレスを発散できるが、外食や宴会も、夏休みの旅行やお盆の帰省も自粛させられ、「疲れ」は溜まる一方だ。
当初は学校に行かなくてもよいと喜んでいた学生たちも、授業への出席に代わる課題として与えられたレポートの山と一人で向き合う日々に空しさを感じるようになった。芸術や体育などの実技科目、それに語学も読み書きばかりでは疲れが溜まるばかりで思うように上達しない。
そして、いちばんのストレスはなんといっても友だちと会えないことである。特に新入生は入学したものの登校しないので友だちができない。半年間、自宅や実家にこもりきりだと孤独感や孤立感に襲われるのは当然で、ある学生は毎朝、目覚めたら涙が止まらないと語っていた。なお秋田大学の調査では、学生の約1割にうつ症状が見られたという。