2012年のロンドンオリンピック柔道女子57kg級で金メダルを、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは同階級で銅メダルを獲得した柔道家・松本薫(33才)。彼女は何を思い、オリンピックの大舞台に立っていたのだろうか。そして、現役を引退した今、その目線の先には何があるのだろうか──。かつて「野獣」と呼ばれた、偉大なる柔道家・松本薫に話を聞いた。
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〈大学卒業後は、女子柔道部で好成績を収めていた企業に所属。2011年のグランドスラム・東京ほか、数々の国際大会で優勝。世界ランキング1位で、2012年ロンドンオリンピックの代表の切符をつかみ、夢の舞台の決勝に見事立つ〉
ロンドンオリンピックでは、金メダルしか見ていませんでした。プレッシャーもったけれど、不思議と怖さはありませんでした。決勝のときに「あれ決勝戦!?」と一瞬、われに返ってしまい、怖さが出ましたが、すぐに野獣モードに切り替えることができたのもよかったですね。
オリンピックの舞台に立ったときは「やっときた、ここまで長かった~」と思いました。柔道は好きで始めたわけではなかったけれど、ここまで続けられたのは、やっぱり両親の存在が大きかった。口約束とはいえ、自分がオリンピックに出て、両親を海外に連れて行きたいという思いがあったからこそ、ここまで頑張れたと思います。
〈ロンドンオリンピックで念願の金メダルを獲得した後には、燃え尽き症候群にもなったという〉
それに、金メダルを取ったら世界が変わるかと思っていましたが、自分の家の前にはいつものスーパーがあるんですよね。当然ながら(笑い)。
それで、もう一度オリンピックに出たら、世界は変わるかもしれないと思ったのと、今後、自分が指導者になったとき、オリンピックでメダルを取った後に続けるかどうかを悩んでいる選手の力になるためには、1度金メダルを取っただけでは何も言えないと思い、4年後のオリンピックを目指すことにしたんです。