現地時間10月22日には、トランプvsバイデンの最後のテレビ討論会が開かれる。これでほぼ大統領選挙の趨勢は決するが、バイデン有利の情勢は固まりつつある。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、勝敗が見えてもなお晴れないアメリカ国民の憂鬱を指摘する。
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11月3日の大統領選挙まで2週間に迫った。新しいことが毎日のように起こりはするが、バイデン有利の状況は固まりつつある。トランプ大統領は、反撃としてバイデン氏の息子がロシアから不当なカネを受け取っていた、として刑事捜査を要求している。ナンセンスである。たとえそれが事実だとしても、大統領になろうとする父親と息子は別個の社会人であるから、これを大統領選挙のメインテーマにしようとするのはいかにも苦し紛れだ。
大統領選挙は50の州ごとに勝敗を決め、その州に割り当てられた「選挙人」を勝者が総取りできるところがほとんどだ(一部で得票による選挙人の割り振りを行う州もあるが、二大政党であるからあまり差がつかず、その州は影響力を失ってしまう)。ざっくり解説すると、ニューヨーク、カリフォルニア、イリノイといった大都市を抱える州は、マイノリティ人口も多く、民主党が圧倒的に強い。逆に、オクラホマ、ミズーリ、アラバマ、ルイジアナなど南部の州は完璧に共和党支持で、これは歴史的に決まっていると言っても過言ではない。残りの中西部の各州は、かつて民主党が強かったが、共和党も勝てるようになったところが多く、それらは「スイング・ステート(右にも左にも振れる州)」と呼ばれる。さらに、フロリダ、ペンシルベニア、オハイオなどは毎回接戦になることから「バトル・グラウンド・ステート(激戦州)」と呼ばれるようになった。
今回注目されてきたのが、そのうちフロリダとペンシルべニアである。この2州で勝利を収めた方が勝ちである。どちらもバイデン氏がリードしているが、特にフロリダはリタイアした高齢者が多いのが特徴で、高齢者を馬鹿にしたり旧軍人から反感を買ったりしているトランプ氏は差を広げられている。バイデン氏は良くも悪くも自分自身が「安心できる老人」なので、高齢者のウケは悪くない。ペンシルベニアはバイデン氏の地元デラウェアの隣の州である。筆者はこの地域を代表する大企業であるデュポン社と仕事をしたことがあるが、穏健でよくまとまった土地柄を感じた。トランプ氏が逆転するのは難しいだろう。国全体の世論を見ても、注目州の動向を見ても、いよいよトランプ氏は苦しくなってきた。