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50年前の大ベストセラー『冠婚葬祭入門』を令和時代に読み直す

自宅に1冊は置いてあった『冠婚葬祭入門』

自宅に1冊は置いてあった『冠婚葬祭入門』

 コロナ禍で一変する生活様式。それは葬儀においても言えることだ。これまでとは異なるコロナ後の葬儀の常識ができつつあるのだ。そして、そんな今だからこそ、読み直したい一冊がある。50年前、戦後の高度成長を経た日本で、大ベストセラーとなった『冠婚葬祭入門』(塩月弥栄子・著)だ。「続編」「続々編」とシリーズ化し、社会現象になった同書では、葬儀にまつわる基礎知識を紹介している。コロナ後に改めてページをめくってみると、時代を超えて受け継ぎたい葬儀の“本質”が記されていた。

〈葬儀は、結婚や出産の行事などにくらべて、なじみが薄いうえに複雑な儀式です〉

 1970年に刊行された『冠婚葬祭入門』の「まえがき」で塩月弥栄子氏は葬儀についてそう書く。裏千家十四世家元の長女として生まれ、茶道の師範を務めた塩月氏は、同書のなかで冠婚葬祭のしきたりや慣習を390項目にわたって解説している。

 2015年に逝去した塩月氏の次女で、故人が設立した茶室「養和会」主宰の五藤禮子氏(茶道裏千家正教授)が当時をこう振り返る。

「『冠婚葬祭入門』が出版されたのは、高度経済成長における核家族化や都市への人口移動などにより、日本が急激な変化を迎えていたときでした。しきたりやならわしを学ぶ機会が激減していたため、母は茶道の稽古場でお弟子さんたちから冠婚葬祭についての相談を受けることが多かったと聞いています」

 まさに時代が求めたといえる塩月氏の著書は、発売1年で100刷を超える異例のヒットを記録。シリーズ全4冊で総計700万部を突破するほど爆発的に売れた。ある年代以上の人であれば“自宅に1冊置いてあった”と記憶する人も少なくないだろう。

予算ははっきり伝えていい

 改めて同書に収録された見出しを見ていくと、“基本的な事柄”と思えるものが少なくない。

〈葬式は、通夜、葬儀、告別式、出棺の順で行なわれる〉
〈遺体の衣装は、あわせ方を左前にする〉
〈遺体は北枕に寝せる〉
〈葬儀の日どりは友引を避けたほうがよい〉
〈一周忌の翌年は三回忌になる〉

 ただ、各項目の解説に半ページずつが割かれ、そのしきたりや慣習に込められた意味まで解説されている。そこにこそ、塩月氏の真意があったと考えられる。五藤氏はこう言う。

「しきたりには本来の意味があり、その筋が通って初めて、気持ちや行為が生きてきます。どんなに正しくしきたりに則っても、そこに故人を思う気持ちがなければ、それは礼を失していることになるでしょう」

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