客引き行為、いわゆる「キャッチ」は風俗業なら風俗営業法で禁じられ、繁華街を持つ多くの方自治体の迷惑防止条例でも路上など公共の場所での客引きが規制されている。キャッチが規制されている理由としては、路上で進路を妨害する呼びかけが迷惑なだけでなく、彼らが紹介する店と客とのトラブルが頻発するからである。新型コロナウイルスの感染拡大のため世界中の生活が一変するなか、繁華街を根城としていた「キャッチ」たちはどうしているのか。ライターの森鷹久氏が、ある繁華街でのキャッチの様子をレポートする。
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「マジで助けてくださいよ、タバコも吸えますんで……」
通行人に食い下がる金髪の若い男性の後ろで、市の委託を受けた警備服の男性が拡声器で怒鳴り上げる。
「違法なキャッチは無視してください! キャッチがいないまともな店に行きましょう!」
千葉県F市の繁華街では、毎夜こうして若いキャッチと、注意を促す警備員との応酬が繰り広げられ、通行人や客、地元商店街の人々が辟易している。この一場面だけを切り取ってみれば、キャッチの若い男がいじめられているようにさえ見えるが「キャッチ=客引き」は、市の条例でも明確に禁止されている。にもかかわらず、繁華街のあちこちにキャッチの姿が目立つ。
「コロナ禍以前からキャッチが邪魔でしょうがなかったですが、コロナで客が減ると、キャッチは余計にウザくなりましたね。若い女のキャッチなんか、おっさんの腕を掴んで強引に店まで引っ張っていく(笑)。しかも連れて行かれた先は、薄い味のビールしか出てこず、つまみは割高、いわゆるプチぼったくり店なんです」
こう証言するのは、地元で居酒屋を営む冨田晋助さん(仮名・40代)。もちろん、冨田さんの店ではキャッチの世話にはなっていないが、以前はキャッチの世話にならないと「店を潰す」と脅されたこともあったと話す。
「暴力団のみかじめ料規制が厳しくなって、今度はヤクザがバックについたキャッチ屋が、商店に金を要求するようになってきたんです。まともな店はキャッチを使っていませんし、キャッチが連れていく店は全てまともではない、これだけは覚えておいて欲しいです」(冨田さん)