日本ではタブー視されることも多い宗教の話。しかし、自分には関係ないと思っていても、気付かぬうちに宗教トラブルの当事者になることもあるかもしれない──。
宗教観の違いを克服しようとしても、その難しさに戸惑い続ける夫婦のケースを紹介する。自営業の50代男性は、学生時代に知り合った妻との間に、成人した子供が2人いる。
「友達夫婦というか、何でも話し合える関係で、家族円満、幸せな家庭でした。ただ、長女が学校でいじめられたことをきっかけに“これまでの子育てに問題があったのでは”と妻が悩むようになりました」
相談相手は、親しいママ友。様子が一変したのは、そのママ友のすすめで、ある宗教施設での礼拝を経験してからだという。
「妻が再び笑顔になって、元の家族に戻れた気がしましたが、勘違いでした。家族はまったく新しい形になってしまったのです。あるとき妻は“私が信仰を知ったことで、罪が許されたのよ”と言い始めたのです。私への相談はなくなり、すべて神様に答えを求めるようになってしまいました」
家族は相変わらず“円満”。しかし、どこか他人行儀でもあるという。東京都の60代の主婦は、夫がある新興宗教に傾倒したことに頭を悩ませている。
「私はよくわからないのですが、夫に言わせると、信者2人の前で誓文を唱えれば入信したことになるのだそうで、夫はそれを済ませているみたいなんです」
それだけならいいのだけれど、と彼女はため息をつく。
「本当かどうかわかりませんが、“女性は男性に従属すべき”という教えがあると言って、すっかり亭主関白になったんです。お祈りのときにも大音量で音楽を流して、近所迷惑でしかたない。調べものが好きで何事もこだわるタイプなので、のめり込むのも早くて……」
愛知県のある夫婦は、夫が隠されていた“ある物”を見つけたことで関係が一変する。
「普段より早く帰ったときに、使わない物を入れる用のクローゼットを慌てて閉める妻の姿が目に入ったんです。“片付けていたの”とごまかしていたんですが、妻が立ち去った後に開けてみると、見慣れない祭壇があったのです」