国内

消えゆく花電車 運行を続ける鹿児島市電と市民の信頼関係

毎年のおはら祭で運行されるため、出番を車庫で待つ鹿児島市電の花電車

毎年のおはら祭で運行されるため、出番を車庫で待つ鹿児島市電の花電車

 花や電飾で華々しく装飾された「花電車」が、地域のイベントや行事を盛り上げながら街を走る姿は、1970年頃までの日本各地で見られる風景だった。今でも花電車を毎年、運行している鹿児島市電の運行事情と、都電で再び花電車を見られる可能性についてライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年は各地でイベントの中止が相次いでいる。緊急事態宣言の期間中は言うに及ばず、解除後も中止・延期されたイベントは少なくない。規模を縮小して開催されるイベントは数えきれない。

 コロナ禍が直撃して経営が苦しいのは、鉄道も同じだ。以前から経営が厳しかったローカル線だけでなく、赤字とは無縁と思われていた首都圏の各線や東海道新幹線といったドル箱路線でも利用者は激減。ここ数か月間は逆境が続いた鉄道業界だったが、ようやく先行きに光明が見えようとしている。

 GoToトラベルに東京発着が対象に追加されたこともさることながら、第3セクター鉄道等協議会が鉄印帳の旅を開始するなど、工夫を凝らした需要喚起策の効果が表れているからだ。しかし、鉄道は観光客だけが利用するものではない。

 むしろ、地元住民・沿線住民が日常生活で利用する比重の方がはるかに大きい。地元住民・沿線住民の役に立つことこそが、公共交通機関が本来は果たすべき使命でもある。地元住民・沿線住民の需要を取り戻さなければ、鉄道は生き永らえない。

 特に、市電は街の中心部に路線網を有するだけに市民の利用率は高い。また、周辺自治体に居住する住民にとっても重要な移動手段になっている。そうした地元住民・沿線住民に頼りにされると同時に親しまれる存在、それが市電でもある。

 約60万の人口を擁する鹿児島県鹿児島市にも市電が走っている。鹿児島市電の総延長は約13.1キロメートルで、保有する車両数は55両。2018年度における年間の利用者数は、1100万人を超える。国内で路面電車を運行する事業者の中で、鹿児島市電は有数の規模を誇る。

 路面電車と言っても、鹿児島市電は昔ながらの懐かしい乗り物ではない。2002年には低床車を導入し、それ以降も続々と新型の超低床車両を増やしてきた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン