菅内閣の支持率が急落中だ。コロナに苦しむ国民は「苦労人の令和おじさん」の登場で庶民重視の政治を期待した。発足当初の支持率は最高74%(読売新聞調査)、自民党に批判的な朝日新聞でも65%で、保守層が地盤だった安倍前内閣より支持のウイングを広げた。それが日本学術会議の任命拒否問題が発覚すると、わずか1か月で読売は67%(7ポイント減)、朝日は53%(12ポイント減)へと大きくダウンした。
「政権に批判的な学者を排除する」という菅首相の統制主義的な手法を目の当たりにした国民は、庶民派イメージとのギャップに戸惑い、不審を覚えたからだろう。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「菅首相は庶民派を演じているが、実は警察官僚に支えられた統制主義者。官房長官時代から自分の意に沿わない官僚を容赦なく左遷した。その目や耳となってきたのが警察官僚出身の杉田和博・官房副長官(事務担当)と北村滋・国家安全保障局長で、いまや彼らの判断が総理を動かしているように見える」
問題の任命拒否を主導したのがその1人、杉田官房副長官だ。杉田氏は日本学術会議側が推薦した105人の会員候補リストから事前に特定秘密保護法や安全保障関連法を批判していた学者6人を除外し、99人リストにして菅首相に提出したと報じられている。首相はリストの人選をそのまま承認していた。
その経歴は、警察庁の警備・公安畑が長く、警備局長、内閣情報官などを歴任した後、第2次安倍政権で官房副長官に就任して以来、現在の菅政権まで足かけ7年10か月にわたって官僚トップの座にある。2017年からは中央官庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局長を兼務して霞が関に睨みを利かせる人物だ。