現場の大きな変化についてベテラン男性記者からは「若い女性は、男性の取材対象者に気に入られやすいからな……」といったやっかみの声も聞こえてくるが、大谷氏は「女性であることを武器にスクープが取れるなんて、彼女たちも思っていない」と否定する。
2018年に当時の福田淳一・財務事務次官がテレビ朝日女性記者に対し「おっぱい触らせて」「キスしたい」といったセクハラ発言が問題になったことは記憶に新しい。が、これは明らかに取材される側の品性の問題だ。
「かつては、自宅前に男性記者が何日も夜討ち朝駆けで待っていると、見かねた取材対象者が『外は寒いから、中に入って話しましょう』と自宅へ入れることもありました。しかし、女性記者相手だと誤解を招きかねません。だから今は、どの組織も記者への対応マニュアルを持っています」
女性というだけでネタが取れるわけではないのだ。
「取材をかけた警察署でけんもほろろに追い返されても、我々の仕事はそこから、どうこじ開けていくかがスタートです。そういう厳しい取材の現場で、気骨ある男性記者が少なくなっているのではないでしょうか」
大谷氏は苦笑いしながらそう解説する。たしかに、若い男性記者の中には「サツまわりは嫌だなぁ」と愚痴る人が増えてきているという。
男性であろうが女性であろうが、記者クラブに座ってネタを待っているだけでは、メディアの醍醐味は得られない。