とくに明文化されていなくても、なんとなくタブーに触れるため忌避されることがある。手間暇かけて育てたものや作ったものを奪うことや、願いを込めて神仏に供えられたものを盗むことなどは「罰当たり」なこととして、窃盗犯であっても避けられることだった。ところが、最近は、その「罰当たり」なことが増えている。ライターの森鷹久氏が、これまでの「常識」が通用しなくなり始めた犯罪の傾向についてレポートする。
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埼玉県東部の白岡市やその周辺自治体で、不可思議な事件が発生している。
「まったく何だって、こんなものを盗んでいくかね? 頭にくるよ」
こう憤るのは、自身の田んぼから、真鍮製の給水用バルブを盗まれたという男性(70代)。仲間の田んぼ、周辺自治体でも先月ごろから同じような「被害」が続出しているという。事件を取材した大手紙社会部デスクがいう。
「真鍮には高価な銅が含まれており、鉄業者などに売ることできる場合があります。周辺で起きた盗難事件は手口も似通っており、同一人物らによる組織的犯行ではないかと当局も見ています」(大手紙社会部デスク)
埼玉県内では、畑から野菜や果物が盗まれたり、隣の栃木県や群馬県では、豚などの家畜が何者かによって盗まれている。これまでにも農作物泥棒はあったが、その規模の大きさが前代未聞と言われる被害が相次いでいる。一部メディアは、こうした犯行に、コロナ禍によって仕事や収入を失った外国人らが関与しているのではないかと報じており、給水用バルブがいっせいに盗まれたのも同じ系統の犯罪かと考えてしまうが……。
「野菜や家畜についてはそうした疑惑もありますが、田んぼからバルブを盗むというのが日本人の仕業の可能性が高い。何しろ、野菜や家畜と違って、専門業者に買い取ってもらう必要がありますからね」(大手紙社会部デスク)
さらに、寺社仏閣に設置してある「賽銭箱」荒らしが、全国で頻発しているともいうニュースについても「関連がある」という見方が出てきている。
「直近だと、岩手と愛知で賽銭泥棒があったとニュースになりましたね。昔から、不景気になるとこの手の窃盗が増えるのです。小学校や中学校に設置してある水道の蛇口が全部なくなっていたり、橋の名前が書いてある橋名板が盗まれたり、マンホールがなくなっていたこともあります」(大手紙社会部デスク)