木村佳乃、吉田羊、仲里依紗が演じる3人の母の恋を描くTBS系ドラマ『恋する母たち』(毎週金曜22時~以下『恋母』)。その原作者である柴門ふみさんと、ドラマの脚本を担当した大石静さんが対談する。大人の恋愛を描き続けてきた2人が、女性の生き方について赤裸々に語り合う。
相次ぐ有名人の不倫騒動。発覚すれば、厳しい批判にさらされる。不倫は家庭内の問題なのではないか──。
柴門:欲求を表に出せば非難され、いろんな意味で、いまの女性は疲弊していますよね。仕事も子育ても主婦業も両立しないと一人前と認められません。
大石:昔は嫁に行ったら、家のことだけしてたらよかったけど、1990年代くらいから? “働くママこそかっこいい”という風潮になってきた。
柴門:働きながら家事に育児なんて、できるわけがないですよ。私もできません。
大石:そうそう。私は30代の頃、子育てに奔走する友人を尻目に、仕事に恋と好き勝手なことをやっていて、この落とし前がどこかで来るなぁと思ってました。あぁ、でもいま思えば、40代も50代も若かった。年を重ねて思うのは、諦めなきゃいけないことの多さ。昔はちょっと徹夜して仕事をするとか、たくさん遊んでも〆切りは守るとか、そういうことができていたけど、いまはとてもできません。
柴門:本当! 油っこいものは食べられなくなっちゃって。だからって、あの頃に戻りたいとは思わないですね。
大石:そう、若さへの郷愁はさほどありません(笑い)。私たちだってピカピカの時代があったんですから、仕方がないと思います。
柴門:そうそう。それにもし30代に戻れたとしても、どうせまた60にならなきゃいけないから。それって大変ですよ(笑い)。
大石:そのセリフ、素敵! いつかドラマのセリフにしよう(笑い)。
柴門:年を重ねてよかったこともあります。精神的に強くなって、嫌なことがあってもスルーする術とか、事前に避けることができるようになりました。それに、なんだか死を恐れなくなったというか、人が亡くなっても若い頃ほど落ち込まなくなったんです。
大石:同感。誰かが亡くなっても、私も近いうちにそっちに行くからって思うと、あまり悲しくありません。でも決して生きることを諦めているわけでもない。この年でこんなに働いている脚本家ってほとんどいないんだけど、私は死ぬまで書き続けたい。バリバリ現役で死ぬっていうのが私の最後の夢ですね。