局アナを超えたオピニオンリーダーに
もう1つ、テレビ朝日が弘中アナ頼みの編成をした狙いは、オピニオンリーダーとしてのさらなる可能性。
もともと弘中アナは、『激レアさんを連れてきた。』などで見せる歯に衣着せぬコメントで人気を高めていきました。女性アナウンサーは制作サイドに嫌われると起用されづらくなり、視聴者に対しても「生意気」「何様」と言われることを恐れて、言いたいことを言えない人が多い中、弘中アナは臆せずに本音を発信してきたのです。
その結果、『弘中綾香のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)、『新春TV放談2020』(NHK)、『民放同時放送 一緒にやろう2020 大発表スペシャル』(民放各局)に出演し、ウェブサイト『Hanako.tokyo』で「弘中綾香の『純度100%』」、雑誌『ダ・ヴィンチ』で「アンクールな人生」を連載するなど、徐々にテレビ朝日という局を超越した存在になりはじめました。もはやトップタレント級のオピニオンリーダーとなっているため、テレビ朝日としてはそれを活用しながら、さらに大きな存在になってもらおうと考えているのでしょう。
10月28日にも、弘中アナが女性ファッション誌『with』が選ぶ「2020年with OL大賞」の“自分ファースト賞”を受賞したことが報じられました。弘中アナは受賞に際して「“働かされている”と思うよりは、すごく乱暴な表現ですが、“この会社を利用してやる”くらいのマインドを持ってもいいのではないかと。そうやって自分ファーストに考えると、社員ライフが楽しくなりそうだなって、思っちゃったりしています」とコメント。仕事で悩みを抱える人々に対する前向きなメッセージであり、オピニオンリーダーらしいコメントではないでしょうか。
公式YouTubeチャンネル『動画、はじめてみました』で「弘中美活部」を立ち上げたほか、さまざまなメイクやコスプレを披露するなど、テレビ朝日としても弘中アナの影響力が大きくなることは大歓迎。これまで何度も「夢は革命家」と語ってきたように、弘中アナは新たなスターアナウンサーのイメージを作り上げ、テレビ朝日もその才能に賭けているのです。
「ベストを尽くす」に専念できる愚直さ
いまだテレビ朝日と言うと、「深夜番組や特番をゴールデン・プライムタイムに昇格させて魅力を削ぐことになり、けっきょく打ち切ってしまう」と思っている人が多いようですが、『あざとくて何が悪いの?』『ノブナカなんなん?』は、よほど結果が悪くない限り、その心配はないでしょう。
最近のテレビ朝日は、「昇格して結果が出なかったら、打ち切るのではなく、深夜帯に戻す」のがスタンダードになっています。事実、弘中アナが出演し、今秋まで土曜22時台で放送していた『激レアさんを連れてきた。』も打ち切らずに月曜深夜帯へ戻りました。
弘中アナの影響力が大きいことも含めて、『あざとくて何が悪いの?』『ノブナカなんなん?』は、よほどの事情がない限り、早期の打ち切りはないでしょう。つまり、本人にとっては、プレッシャーこそあるものの、番組を背負うほどではなく、自分のベストを尽くすことに専念するのではないでしょうか。
弘中アナは『Hanako.tokyo』の最新コラムに、「かくいう私はどういうツキの回りか、10月から番組が3つ増えた。もはやオーバーワーク気味であることは言うまでもないが、とにかく愚直にひとつひとつやるしかない」とつづっていました。こういうマジメさや努力家であるところも人気の源であり、テレビ朝日が頼りたくなる理由の1つなのでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。