嘘をついてお金をとってはいけない、とくにそれが公金ならなおさら、というのは子供でも理解していることで、誰もがうなずく「正しいこと」だろう。ところが、持続化給付金については、なぜか自営業でもフリーランスでもないのに、嘘の確定申告をして給付を受ける人が続出し、人々を困惑させている。給付金を受け取ったものの、それを返還したいがうまくいかない40代派遣社員男性の事情について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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「持続化給付金詐欺」に関わったとして検挙される人々が、全国で相次いでいる。名の知れた大学の野球部員から現役の暴力団員まで、実に様々な人々が詐欺を働いていたという事実に驚くしかない。先日、こうした人々の「軽さ」について書いたのだが、記事を見たという数名の男女から、SNSや知人を通じてコンタクトがあった。全員が「持続化給付金詐欺」に関与しており、平たく言えば「逮捕されない為には何をすべきか」という、虫の良い相談が飛んでくるばかり。正直うんざりしていたが、一人気になる人物がいた。
「詐欺だなんて全く思いません、友達もみんなやったんです。みんな……いや、周囲の5人、最終的にやったのは僕と……もう1人。これは被害ですよ」
都内のファミリーレストランに現れたのは、南関東在住の派遣社員・中間光助さん(仮名・40代)。彼と会うことを決めたのは、彼は確かに犯罪に手を染めていたものの、また新たな「詐欺」に巻き込まれている可能性が高く、確認を取りたかったためである。
その前に、中間さんがいかにして詐欺を働くに至ったか、その背景を説明したい。
とある派遣会社に所属し、日中は大手運送会社の物流倉庫で働いている中間さん。時給は1100円、休憩時間の1時間を除けば一日7時間の労働で日給7700円、週5日勤務で、月に15万円強の収入を得ている。四十男として心許ない収入額であることは本人も承知をしており、日々、ネット上で見つけた「ビジネス」や儲け話に乗っかってみては、大した収入も得られないだけでなく、出費ばかりがかさんでゆくという悪循環に陥っていた。
しかし、金への執着は人一倍あるようで、マルチまがい商法やねずみ講、情報商材売買など「儲かる」と聞けばすぐに飛びついたようだが、なぜか本職の仕事はいつもおざなりだった。ファミレスでは、着席したものの一向にメニューを見ようともせず、筆者が「ご馳走する」というまでオーダーをしなかったことからも、何かを察するしかなかった。