警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、警察官や暴力団員が2人一組で行動する理由と、組員の切実な事情を探る。
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「ヤクザも2人一組でなければならない場合があるんでね」
現役の暴力団幹部が妙に真面目な顔を見せた。
昨年10月、六代目山口組若頭、いわゆる山口組ナンバー2の高山清司氏が出所したことで、山口組の分裂抗争は再燃し始めていた。だが、コロナ渦で抗争は休戦。不気味な静けさを見せていた最中、今度は山口組から分裂した神戸山口組の中核組織である山健組が脱退騒動を起こしたのだ。さらに神戸山口組、そこから分裂した絆會(任侠山口組から組織名を変更)でも内紛が勃発し、銃撃事件も発生。一度は山口組から出ていった絆會の組員らが、六代目山口組側に移籍するという事態が起きている。
このような状況の中、暴力団幹部の口から“2人一組で”と聞いて、組長や幹部の安全確保のために若い衆がボディーガードに付くというだけでなく、組員全員が抗争に向け備え始めたのかと思ったのだ。
2人一組といえば、『相棒』(テレビ朝日系)を始めとした警察ドラマのように、刑事がペアで動くというのは知られているところだ。その理由は、1人が聞き役でもう1人が相手の動静確認およびメモの筆記役。取り調べの場合は合いの手を入れたり、なだめ役やすかし役など、互いに連携するのだという。
呼び方は、相棒、相方、連れ、ペアなど人によってまちまち、警察の隠語的な名称は無いらしい。
「現象事象の場合は、犯人を追いかけながら連絡調整をする必要もありますからね」
警視庁の元刑事は2人一組の理由をそう話す。現象事象とは、誰もが事件が起きたと分かる事案、目前の事象のことをいう。捜査中、たまたま目の前でひったくりやケンカ、傷害事件が発生した、交通事故に出くわしたなど突発的に起きた事件も現象事象なる。
「犯人に襲われる、追いかけている途中で反撃され刺されるなどの事故防止の意味もあります。ですが常に複数とはいかないので、単独の時もあります」
警察だけでなく、ヤクザも山口組が分裂した際は、傘下の組には単独で行動しない、防弾チョッキ着用の伝達がなされたと聞く。襲撃や銃撃など突発的な事件を防止するためだ。高山氏が出所し再び抗争が激化し始めた時も、防弾チョッキ着用の伝達が行われていた。
ちなみに交番は複数勤務が基本。現在は4日に1回の夜勤がある4交代制だが、交番の数に対して勤務する警察官が足りず、かつて3交代制だった時は当り前だった4~5人での勤務が難しい交番もあるらしい。ヤクザにも、上層組織の組員に下層組織の組員が数人ずつ交代で勤務する当番制がある。警察とヤクザは真逆にあるが、どこか似ているのだ。