人がスマホを多用するようになったのは、ここ数年のこと。この状況が10年、20年、50年と続けば、人体にどんな影響が出るのか、まったくわからない。すでにスマホが原因の多数の体調不良も報告されている。
スマホの引き起こす影響は脳にまで及ぶという。菅原脳神経外科クリニック理事長の菅原道仁さんはこう話す。
「スマホの長時間利用によって、脳が情報を処理しきれなくなる『脳疲労』が引き起こされます。もちろん、テレビを見る、読書をするといった行為でも、長時間にわたれば脳に疲労は蓄積します。ですが、スマホから得られる情報はゲームや動画、SNS、インターネットなどさまざまな刺激の強い要素が組み合わさっている。情報量が格段に多く、色彩や音、光などの刺激が強いため、特に脳の神経を疲労させる度合いが高いといえるでしょう」(菅原さん・以下同)
脳疲労に陥ると脳の前頭前野の働きが阻害され自律神経に支障をきたす。不眠や便秘といった不調を引き起こすだけでなく、疲労が進むにつれて不安、イライラ、気持ちが沈むなど感情をコントロールする力が低下するという。
「スマホは持ち運びが簡単で手軽に見られるため、ついつい“ながら見”をしがちです。ですが、ちょっとした息抜きのつもりでも、脳に与える影響は大きく、気づかない間に疲労が蓄積されるんです」
「物覚えが悪くなった」というのも、スマホが原因の可能性がある。
「スマホを見ていると大量の情報がインプットされますが、反対にアウトプットする機会はほとんどありません。そのため、たくさんの情報を理解したつもりでも、仕入れた知識を反復して記憶を定着させることがないため、長期記憶につながりません。知識量が増えないどころか、思考力の低下を招くばかりです。物忘れが激しくなるのも、情報をアウトプットする“想起力”が低下していることが原因でしょう」
人の名前や言葉が思い出せず、「アレよ、アレ」となるのは、「アウトプット離れ」が引き起こす想起力の低下の典型例だという。