第99代総理大臣に就任した菅義偉氏は昭和23年(1948年)12月6日生まれの「団塊の世代」だ。第二次大戦直後の昭和22年(1947年)から昭和24年(1949年)に生まれた「団塊の世代」は、戦後の経済成長を支えてきた存在だが、政治の世界では決して目立っていたわけではない。
「カラーが見えない」「大きなビジョンがない」などと指摘されることも多い菅総理は日本をどこに導くのか──。
「とにかく菅さんは団塊世代の不安を解消するビジョンを早く示すべきでしょう」
菅氏と同じ年で前東京都知事の舛添要一氏(元参議院議員)はこう指摘する。2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者になる。医療や介護は今まで以上に重要となるが、取り巻く環境は芳しくない。
まずは安倍政権が積み残した高齢者の医療負担の問題。後期高齢者の医療費の自己負担割合は現状では原則1割だが、一定の所得以上の人は2割に引き上げる案が検討され、この年末までにとりまとめられる予定だ。
「加えて、これから団塊の世代の介護リスクが高まることを理由に、介護保険料がさらに値上げされる可能性もあります」(舛添氏)
2025年問題に向け、国は医療費抑制のため病床数の削減と在宅医療を推進している。病院から早く追い出されるが、お金がないので在宅でも十分な医療を受けられない「医療難民」が発生しかねない。
菅首相にとって最大の政策テーマは日本の人口のボリュームゾーンとなった同じ世代を“どう切り捨てていくか”にあるのかもしれない。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号