2016年のリオデジャネイロオリンピック競泳女子200m平泳ぎで優勝し、見事金メダルを獲得、日本中を歓喜の渦に巻き込んだ金藤理絵(32才)。その栄光の裏では、挫折を経験していた。
東海大学に入学し、加藤健志コーチのもとでトレーニングを積んでいた金藤は、2008年の北京オリンピックで代表入りし、女子200m平泳ぎで7位に入賞する。2012年のロンドンオリンピックでのメダル獲得が期待されるも、腰痛の悪化もあり、代表から落選してしまう。
オリンピック代表落ちから2年経っても、ネガティブな気持ちから解放されることはなかったというが、一方、勝たなければというプレッシャーもなくなっていく。気負いや重圧から解放されたのが功を奏したのか、この頃から調子が上向き、2014年パンパシフィック水泳選手権やアジア競技大会で2位になり、国際大会でも好成績を収めるようになる。金藤が挫折を経て、栄光を勝ち取るまでを振り返る。
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スポンサーからの叱咤激励で奮起
自分でも不思議なのですが、リオ五輪の前年(2015年)には、「オリンピックに向けて頑張るぞ!」という気持ちが急にムクムクと芽生えてきたのです。
そんな前向きな気持ちで臨んだ世界水泳ですが、妙に力みが出てしまい、6位入賞にとどまってしまいました。
悔しくて泣いているとコーチが厳しい表情で言いました。
「泣くほどレースに対して真剣だったのか? 全力を出しているようには見えなかったぞ」と。さらに、ロンドン五輪代表から外れたときも見放さずにずっと応援してくださっていたスポンサーの担当者からも、「今日の決勝のようなレースなら、もう応援できません。ぼくたちは、『ぼくたちが応援したい!』と思うような泳ぎをするあなたを、応援したいんです!」と、言われました。
私にしてみたら、せっかく立ち直りかけていたところなのに、という思いもあって、「そんなにきついことを言わなくても」と、落ち込みました。でも、確かにレースの映像を見ると、本気度が足りない泳ぎで……。
それが奮起のきっかけでした。自分の頑張りを認めてくれていた人たちに、ふがいないレースを見せてしまったことが申し訳ない。自分ひとりでレースをしているような気持ちになっていたけれど、周囲の後押しあっての金藤理絵なんだから、気持ちを入れ替えなければならない──そう強く思ったのです。