今年のプロ野球は、コロナの影響で各球団とも収入が激減している。球界全体の経済損失は1400億円を超えるという試算もあり、特に高額年俸の選手にとっては厳しい冬が待っている。『週刊ポスト』(11月6日発売号)では、球界に吹き荒れるリストラと大減俸の嵐を特集しているが、そういうご時世だからこそ、「選手のコストパフォーマンス」に注目が集まっている。
プロ野球のデータに関する著書が多いジャーナリストの広尾晃氏はこう語る。
「シーズンが143試合から120試合になったことで、年俸に対して働きの効率が悪い選手が多くなっています。これが今シーズンの大きな特徴でしょう。一軍レベルなのに1試合も出ていない選手もいる。特に高額年俸のFA選手のコストパフォーマンスの悪さが目立っています。FA選手は複数年契約が多いが、その期間が切れれば大幅な年俸ダウンや戦力外になる。その流れに拍車がかかるシーズンオフになるのではないか」
リーグと選手会などの取り決めで、今シーズンに関しては選手の年俸は契約通りに支払われることが決まっているが、そのせいで逆にコストパフォーマンスの悪さが目立ち、減俸やリストラが進むという見方もある。セ・リーグの優勝を決めた巨人にしても、クライマックス・シリーズはないからボーナス収入も限定的なのに、貢献した選手にはそれなりの評価をしなければならない。大塚淳弘・球団副代表は、「13~14人の選手を自由契約、または育成契約に変更する」と明言している。
では、どんな選手のコストパフォーマンスが良いのだろうか。広尾氏が算出したデータ(10月29日現在)によれば、投手では中日・大野雄大の1イニングあたりの年俸は95.8万円で、エース級で高額年俸(推定1億3000万円)にもかかわらず、ダントツの“お買い得感”だという。最多奪三振は当確、さらに最優秀防御率との投手二冠を狙う球界屈指の左腕は、球団経営的にも最優秀という結果だった。今オフのFAの目玉として、ますます注目されそうだ。
各球団の主力と比べると、阪神・西勇輝は1イニングあたり146万円、巨人・菅野智之は510.6万円。最多勝の菅野は推定6億5000万円という高額年俸がやはりネックになる。ポスティングでのメジャー移籍が取り沙汰されるのも、さすがの巨人もこの年俸を払いきれないのではないかと噂されるからだ。ちなみに、その巨人からロッテに移籍して復活した澤村拓一は、シーズン通して活躍していないために550万円と、菅野よりコスパは悪い。さらに、こちらも二軍が長かった阪神・藤川球児(引退を表明)は1714.3万円だった。コスパの悪い選手がトレードや引退を余儀なくされることがわかる。