アメリカ大統領選の主役は、トランプでもバイデンでもなく彼らだったのかもしれない。その“暴力的熱狂”は今後どこへ向かうのか──1年前に渡米し、大統領選を現地取材してきたジャーナリスト・横田増生氏がフォトレポートする。(文中敬称略)
* * *
混乱をきわめた大統領選挙は、ようやく投票を終えた。トランプが3月、新型コロナのため国家非常事態を宣言して以来、目玉イベントの民主党や共和党の党大会さえも、オンラインに切り替わった。
コロナはその後、大統領選挙の大きな論点になり、トランプは自らの失政を言い繕うのに終始した。トランプは、消毒液を体内に注射することでコロナが消えるというデタラメを語り、多くの国民の顰蹙を買ったこともある。10月にはトランプ自身がコロナに罹患するという“オクトーバー・サプライズ”を引き起こした。
コロナの患者数や死者数が増えるにしたがって、その悪影響を一番被る高齢者たちがトランプ支持から離れていった。
しかし、トランプ信者たちは「コロナの数字はかさ上げされている」と口をそろえる。理由を尋ねれば、「死者をコロナ患者と申告すれば、医者が1人につき相当のお金がもらえることになっているからだ」と。これはトランプが選挙戦終盤で何度も繰り返してきた陰謀論。
コロナと並んで選挙の論点になったのが、人種問題だ。5月にミネソタ州で黒人男性が白人警官に8分以上にわたり膝を首筋に落とされ、窒息死した事件が起こった。これにより、「制度的人種差別」が選挙戦のもう1つの争点として浮上した。
制度的人種差別はない、とするトランプとその支持者たち。トランプは「法と秩序」という強硬な看板を掲げることで、問題を鎮静化しようとした。対するバイデンは、初の黒人副大統領候補となるカマラ・ハリスと組むことで黒人票固めを狙った。