大統領選挙から丸二日経っても混乱は続いている。開票結果が明らかにされても、おそらく本当の決着にはならないだろう。トランプ大統領はすでに法廷闘争を始めているし、バイデン氏も簡単には退かないはずだ。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、大揺れに揺れるアメリカの苦悩をリポートする。
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金融関係の人は、まさに現金なものである。NEWSポストセブンで直撃したウォール・ストリートの大手投資銀行幹部のM氏は、筋金入りのトランプ支持者で、トランプ絶対不利という事前予測のなかでも、「トランプが勝つ!」と興奮気味に話した人物だ。別に意地悪をするつもりではなかったが、トランプ氏が負けそうだと報じられている選挙翌日の夜、改めて同氏をつかまえて現状をどう見るか聞いてみた。すると、手のひらを返してトランプ氏を批判したのでちょっと驚いたのである。
「トランプはミスを犯した。これだけアメリカ人を苦しめているコロナ問題を軽視しすぎたのだ。親子でメディアに登場し、死者の数などどうでもいいとか、見ての通りだ、などと無神経な発言をしたことが致命的だった。あれを見て、この親子の政治センスのなさにびっくりした」
これもすでに別記事でリポートしたが、そのインタビューで息子のドナルド・トランプJr.氏は、来年2月までにコロナによる死者は全米で40万人に達するという推計について聞かれて、「そんな数字がどうしたというのか。そんなものは何でもない」と放言した。さらに父親のトランプ大統領は、涼しい顔で「It is what it is.(見たままだ)」と言ってのけた。この発言は反トランプのメディアで大きく報じられ、各方面から批判を浴びた。
しかし、M氏はバイデン氏や民主党を支持しているわけではない。もしバイデン政権になったら何が起きるか聞くと、暗い声になった。
「私が恐れるのは、右であろうと左であろうと、過激集団が暴れだすことだ。バイデンは警察を動かすことができないだろうから、国中に暴力事件が連鎖していく危険がある」