インフルエンザ流行の時期を迎え、多くの人がワクチンを接種している。そうしたなか、韓国でインフルエンザの予防接種後の死亡例が相次いで報告された。
韓国の保健行政機関である疾病管理庁は、「インフルエンザワクチンの接種後1週間以内に、80人以上が死亡した」と発表。10月末時点で報告された死者は83人にのぼるという。しかし、韓国では昨年インフルワクチン接種後に1531人の高齢者が死亡しており、今年が飛び抜けて多いわけではないとの指摘もあり、冷静になるべきだとの声もある。
とはいえ、インフルエンザワクチンの危険性について、不安を抱く人も多いはずだ。薬剤師の長澤育弘氏はこう指摘する。
「副作用(副反応)のない薬品はなく、インフルエンザワクチンも例外ではありません。もちろん、接種を受けるときに体調が悪ければ、ワクチンが正常に作用しないどころか過剰に反応してしまうこともある。重大な副反応としてはアナフィラキシーショックや運動・意識障害、肝機能障害などが報告されています。心臓や腎臓、肝臓、呼吸器などに持病を持つ人、またアレルギーを持っている人は必ず接種前に医師に相談してほしい」
ワクチンの管理も重要だ。
「ワクチンは10℃以下の冷蔵保存が基本ですが、中には管理が杜撰な医療機関もある。温度管理が適切でない場合、ワクチン中の物質が固体となって析出し、アレルギーや副作用が出やすくなったり、効能がなくなることも考えられる。ワクチンはタンパク質でできているため、温度変化でその形状が変わってしまうのです」(長澤氏)
高品質のワクチンを接種できたとしても、こんな問題が立ちはだかる。『ワクチン診療入門』の著書があるナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師はこう話す。
「インフルエンザは毎年、流行するウイルスの株が変わる。それを抗原変異といい、ワクチンは毎年新しいものを作り直す。『A香港型』の亜型など前年の流行株を細かくみてWHOが予想、それを参考に日本では感染研が株を決定してワクチンを製造する。ところが、年によってはこの予想が外れることもあるのです」