早稲田大学と慶應義塾大学が争う「早慶戦」といえば、東京六大学野球でもっとも盛り上がる対戦カード。早稲田も慶應も、互いのリーグ戦優勝回数は大差ないのに(早稲田45回、慶應37回)、出身者のプロ野球選手数も活躍度も、圧倒的に早稲田が勝っている。
リーグ戦優勝45回、全日本大学野球選手権優勝5回、明治神宮野球大会優勝1回。早稲田大学野球部の歴史は、まさに名門と呼ぶに相応しい輝かしいものだ。
現在、早稲田大学野球部の指揮を執るのはプロ野球、メジャーでも活躍した小宮山悟監督。「早稲田野球とは何か」を訊ねた。
「ひたむきで泥臭い野球ですね。学生たちには自分ができる最大限のことを100%発揮することが重要だと教えています。もちろん勝つことは大事ですが、いい加減にやって勝つくらいなら、一生懸命やって負けるほうを良しとしています。根底には、私が学生時代に受けた、飛田先生(穂洲、初代監督)の愛弟子である石井連蔵先生からの教えがあります」
“学生野球の父”といわれる飛田穂洲。彼が提唱した「一球入魂」の精神が、早稲田野球のすべてであるという。この強い意志、受け継がれる伝統が、各々のポテンシャルをトップレベルへと引き上げていく。
早稲田大学野球部は、毎年スポーツ推薦で全国有数の選手4人を入学させ、いつの時代も万全な戦力を整えている。推薦枠としては、スポーツ推薦4枠+自己推薦+アスリート推薦、その他合計で大体7枠程度と言われ、ドラフト候補生の野球エリートたちが毎年入部してくる。
将来を嘱望されているだけに、本人たちの意識も高い。早稲田から日本生命を経て巨人、横浜で活躍した仁志敏久氏が語る。
「僕は特別選抜試験で早稲田に行きました。そのため、必ず活躍しなければいけないという使命感がありましたね。戦う集団において“想い”の強さは重要。最初から目的意識がはっきりしている子たちが早稲田に入ってくるんだと思います」