放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、明治座で行われる「喜劇」と「寄席」の二本立てについて。
* * *
ジャーン! いよいよ情報解禁です。コロナの前から明治座のスタッフと色々考えていた舞台。企画をたのまれたので「この御時世、こうなったら東京は東京風味でとことん笑ってもらいましょう。来年の事を言うと鬼も笑うので発表しちゃいましょう」という訳で、私の提案は今までどんな“エンタメ好き”も“芸能道楽”も見たことのない、お腹いっぱい……なのにまたおかわりしちゃう「喜劇」と「寄席」の連日二本立てです。
江戸の風がいつも頬をなでる日本橋浜町「明治座」。この近くで生まれ育ったのが、私の心の中の喜劇王・三木のり平です。明治座でたくさんの爆笑喜劇を生み出しました。その辺のところは出版されたばかりの『何はなくとも三木のり平』(青土社)に詳しいです。
少し足を延ばせば、私の大学生時代まであった寄席「人形町末広」です。靴を脱いで下足札をもらう畳敷きの古い寄席でした。志ん生、文楽、円生、そして談志、志ん朝まで楽しむことができました。江戸っ子にとってのユートピア、てやんでいな小さなディズニーランドです。
この土地柄から考えつくのはただひとつ。「喜劇」も「寄席」もぜいたくに両方見せちゃえ……という訳で、明治座スタッフから「いま東京喜劇を作れるのは?」「三宅裕司は熱海五郎一座をやってますから、次にできるのは書いて良し、出て良しの宅間孝行でしょ」「決まり」。