橋梁の耐用年数はおよそ50年と言われており、2023年に日本全国の橋梁のうち43%(約17万1千橋)が50年を超えるという試算を国土交通省が明らかにしたのは6年前のことだった。その後、全国で橋梁の寿命を延ばすための工事が行われているのだが、その一環ともいえる日野市の耐震補強工事で致命的な手抜きが行われたと報じられた。問題の「緑橋」が生活圏内にある、俳人で著作家の日野百草氏が、緑橋を渡る人、普段から利用する人たちの様子をたずねた。
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「交通量も多いし、大型車はこの橋を使うことが多い、本当にどうするんでしょう」
中央道を跨ぐ緑橋の近くに住むという子育て中の女性は心配そうにフェンス越しの橋を覗く。橋を渡ってすぐに日野台二丁目の交差点のため、橋上で詰まったダンプやトラック、園児を載せたバスが赤信号のたびに連なる。
緑橋は今年2月、3度目の財政非常事態を宣言した東京都日野市の北部、中央自動車道上に掛かる市道である。猛スピードで行き交う橋下の高速道が嘘のように橋上はのどかなもの。
しかし、そんな日常なにげなく使うような橋の柱に、じつは鉄筋が入っていなかったとしたらどうだろうか。
「手抜きなんですか、ありゃー、じゃあコンクリだけで支えてるの?」
散歩の途中だという老人は報道を知らなかった。
「いま渡ってきたところだよ、怖いね」
老人は苦笑い。私も知らなければこんな50mほどの橋、渡るのになんともないどころか気にもとめないだろうが、この事実を知らされてからはなんとなく怖い。
「どうりでなんか揺れると思った」
別の老人が話してくれたが、橋が揺れるのは当たり前で気のせいとはいえ気持ちはわかる。ある日突然、何気なく使っていた橋が、とんでもない手抜き工事による欠陥橋だと知ってしまったのだから。