国内

江戸幕府、女性の職業上身分を認めず「職人は男」の通念生む

aa

青森県南部地方で大正期まで使用されていた掛布団(どんじゃ 19~20世紀 青森県南部民俗資料 アミューズミュージアム/田中忠三郎コレクション Amuse Museum,Collection Of Chuzaburo Tanaka)

“男女”の区分の歴史を振り返った国立歴史民俗博物館(千葉・佐倉市)の企画展示『性差〈ジェンダー〉の日本史』(12月6日まで)が注目を集めている。現代に至るまでの長い歴史のなかで、日本における「性差」の認識は変化してきた。同展では、古文書や絵巻など貴重な史料が多く展示され、性差の変遷を知ることができる──。

 古代の日本では、「男女」というものが意味をなさなかったという。男性も女性も多様に活躍し、妊娠・出産を経た女性が社会の重要なポジションに就くことも当たり前だった。しかし、その状況は、7世紀から8世紀にかけてガラリと変わる。契機となったのは、中国から取り入れられた律令だ。律令は男性優位の法体系であり、日本人もここで性差を認識するようになっていったのだ。

女性が他人に髪を結われることが処罰対象に

 律令によって、「性差」は民間の人々の暮らしにはどのような影響を与えたのだろうか。

 中世において、女性たちは幅広い分野の職についていたと考えられる。

 1500年頃に描かれた絵画史料である『七十一番職人歌合』は、142種類におよぶ仕事を紹介しているが、そのうち男性が108種、女性が34種で女性が約4分の1を占めている。この絵画のみが当時の実態を示すわけではないが、中世の女性たちがさまざまな職業で活発に働いていたことは、多くの資料に残されている。

 だが、時代が近世へと移ると、プロの働き手である「職人」から女性が姿を消す。国立歴史民俗博物館の教授で、「性差の日本史」のプロジェクト代表を務める横山百合子さんはこう言う。

「江戸時代は、同じ職業に携わる者がグループをつくり、幕府への奉仕などの役割を負う代わりに職業が身分として保障されていました。そのグループのメンバーは家の戸主である男性に限られ、女性は認めないというのが原則でした。

 19世紀初頭に老中、松平定信の命によって鍬形蕙斎が描いた『近世職人尽絵師』では、103種の職人のほとんどが男性で、女性は遊女や売女など、性的サービスの提供者以外は含まれませんでした」(横山さん・以下同)

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン