大人世代の女性にとって、髪の悩みは尽きないもの。“見た目年齢は髪で決まる”なんて見出しをテレビや雑誌で目にすると、思わず鏡をのぞき込んではタメ息がもれる。白髪が増えた、ツヤが減った、細くなった、抜け毛が多いなど悩みは人それぞれだが、なかでも白髪ケアは悩ましい問題だ。
ヘアカラーは白髪に悩む人にとって身近な解決策だが、その白髪染めが私たちの健康を害するケースがあることも知っておきたい。毛髪診断士・毛髪技能士の資格を持ち、『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』の著書もある美容ジャーナリストの伊熊奈美さんは、「ヘアカラーによるかぶれは、あまり大きく報じられていませんが、放っておけない問題です。なぜなら、染めている人ならだれにでも起こりえることだからです」と注意喚起する。
美容院でも自宅でも、白髪染めがルーティンになっている大人世代にとって、ヘアカラーでしみる、かゆいというのは、敏感肌で化粧品がしみたりかゆくなったりすることと同じレベルの肌トラブルと考えられがちだ。症状が軽ければ“敏感肌かな”といった程度で済むが、重い症状なら「接触皮膚炎」といわれる皮膚の病となる。
ヘアカラーかぶれに皮膚科医も警鐘
公益社団法人・日本毛髪科学協会の副理事長を務める、東邦大学医療センター大森病院 皮膚科臨床教授の関東裕美先生は、前掲書『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』の中で、ヘアカラーかぶれの症状について次のように見解を述べている。
「軽いうちは赤くなってブツブツが出てきます。患者さんの襟足や耳周り、生え際などでこの症状を見たら、まず毛染めを疑います。治ったと思ってまた染めると症状が出て、また治ったら染めて……と繰り返していると、顔まで腫れたり、リンパ液が出てジュクジュクしてきたりします。
こうなると、頭皮とは関係のないところにまで湿疹が出る『自家感作性皮膚炎』という状態になります。これは過剰反応として全身に広がったもので、湿疹の部分で活性化したリンパ球が血液に乗って体中に散らばっていくのです」
手に出た湿疹にステロイド剤を塗っても治らないので、元凶を探していったら、実はヘアカラーで毎回かぶれていた、という症例もあるという。また、症状が出る経過について、関東先生からこんな指摘も。
「繰り返し湿疹が起きるのはアレルギー性の接触皮膚炎で、ヘアカラーをしている最中から2日くらいかけてゆっくり出てくるので『遅延型』といわれます。一方、毛染めに含まれるアレルゲンに触れた瞬間反応する『即時型』もあります」