中国共産党の司法部門の最高機関である中国共産党中央政法委員会は11月1日、同委の公式ニュースサイトで、「中国民主共和党」と「中華民主連邦共和国」を創設し、同共和国の最高指導者である「大総統」への就任を宣言した河南省在住の男に実刑判決が下ったことを報じた。男は裁判で国家転覆罪と国家安全法違反、さらに海外の情報機関と通じたスパイ罪などで有罪となり、懲役13年の実刑判決となった。
同委が自らの公式サイトで、国家転覆罪やスパイ罪などのケースを公式に報じるのは極めて異例。中国の司法当局が、海外の情報機関による中国共産党政権の転覆計画について警戒を高めている証拠とも言える。
この男は「張」という名字しか明らかにされていないが、「博士号を持つ地方企業の技術者」で、原子力関係の専門家とされる。
張は仕事がうまくいかず、会社内で出世が遅れていることからノイローゼ状態になり、西側諸国の政治・選挙制度にインターネットを通じて注目。国民投票を通じて西洋政治システムを実現するという考えを思い付いたという。
張は2018年4月、海外のホテルで「建国プログラム」と「党綱領」を起草。ホテルの部屋で「中国民主共和党」と「中華民主連邦共和国」の創立式典を開き自ら「大総統」として宣誓し、「大統領令第1号」を発令した。この模様の写真を10以上の中国のSNSにアップロード。張は滞在先の政府に2度、亡命申請をしたが、いずれも却下されたという。
その後、「外国のスパイ情報機関の職員」が張に接触し、中国の機密情報を提供すれば、「亡命申請は認可されるかもしれない」ともちかけたという。
張はこの申し出を受け入れ、数日後に帰国。河南省の省都・鄭州市に事務所を借りて「党本部」とし、「中国の未来」などの広報資料を執筆し、2人の党員と活動を開始した。その後、中国の情報機関である中国国家安全省は張が海外のスパイ機関に原発の資料を渡そうと企てていることを察知し、2019年4月、張を逮捕した。