次期大統領の座を確実にしているジョー・バイデン氏は、党内の融和と国内の融和を呼びかけるが、民主党さえ一枚岩には程遠い。選挙のために、バーニー・サンダース氏やエリザベス・ウォーレン氏など、社会主義思想を信奉する左派を取り込んでしまったために党内は分裂状態だし、トランプ党の極右と融和することなど到底できない。右と左の過激グループが行動を起こせば、内戦状態に陥る危険もある。コロナ禍でそんなことになれば、「アメリカのメルトダウン」である。絵空事ではない。最新の軍隊用の武器が、いくらでもガンショップで手に入る国である。すでにトランプ党の過激派は、重武装して街を練り歩いている。そして、トランプ氏はそのような反乱分子をどう扇動すればいいかよく知っているし、そうした団体との関係も噂されている。ゴリラを怒らせるとどうなるかわからない、というのは、民主党、共和党のどちらにとっても頭の痛い問題なのだ。
バイデン氏は言葉だけでなく、自ら体を張る覚悟で国民の融和に全力を尽くさなければならない。共和党は、煽れば動くトランプ党に安易に与する幻想を捨て、民主党と政策で勝負する真っ当な党運営に戻るべきだ。そして、トランプ氏は今こそ勇気をもって敗北を認める時なのだ。ウォーターゲート事件により、アメリカ史上、最も屈辱的な辞任を強いられたニクソン大統領の辞任の弁を、トランプ氏は知っているだろうか。セオドア・ルーズベルト大統領の言葉を引用し、敗北を認める尊さを語ったものである。
《重要なのは批評家ではない。強者がどのようにつまずくかを指摘する者でもなければ、もっとうまくやれるところを教える者でもない。称賛は、実際に競技場で埃と汗と血にまみれた者に向けられる。努力する者、失敗する者、何度も繰り返し失敗する者に向けられる。どのような努力も失敗と欠点を伴うのだから。それでも行動を起こそうと努力する者、偉大な熱狂や偉大な献身を知る者、価値あることに自らを捧げる者、最後には偉業が勝利することを知っている者、たとえそうならなくとも、少なくとも大胆不敵に敗北する者に向けられる。そして、その者は、勝利も敗北も知らない冷淡で臆病な魂とは無縁なのである。》