人工知能研究者の黒川伊保子氏がベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』に続いて上梓した『娘のトリセツ』(小学館新書)が話題を呼んでいる。いくつになっても娘は可愛く、そして悩ましい。それはどんな家庭でも変わらない……「大人になった娘のトリセツ」について、黒川氏が解説する。
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〈大人になった娘に対して、「娘が30代なのに結婚する気がない」「40代なのに子供を作らない」といった悩みをもつ人も多く、“娘が親の意見を聞いてくれない”と嘆いている〉
テレビ番組や雑誌などで人生相談の仕事をお受けするのですが、60~70代だとそうした悩みが圧倒的に多い。
回答は一つで、「娘をどうこうできると思うな」です。「娘が35歳で独身のキャリアウーマンで、海外旅行に行きまくって人生を謳歌しているが、早く結婚してほしいので、全部やめさせたい」って言うので絶句しますよ(笑い)。
成人した娘の人生をどうこうしたい親は、娘がちょっと失敗すると、鬼の首を取ったように「オレの言うことを聞かないからだ」とマウンティングし、ブランドものの服を買ったと言うと、「そんなお金があるなら、結婚資金を貯めろ」と、自分がさせたいことを押しつける。そんな親と話したい娘などいるわけがなく、こうして対話がなくなっていくのです。
娘が子供のときのように仲良く会話をしたければ、「いつ」「誰と」「どこへ」といった5W1Hの質問をやめる、押しつけをやめる、そしてもう一つ、否定から入るのをやめることです。
対話をするときに相手の弱点を突いて否定から入るのが男性の基本で、問題解決を急ぐ男性のクセと言えます。
たとえば、娘が海外旅行に行くと言うと、「直行便も飛んでない国に行って、仕事は大丈夫なのか」と否定してしまう。こういうときは、まず「いいなあ、オレもその国、行ってみたかったんだよ」と受け止める。そのうえで、「ところで、直行便飛んでいるのか?」と聞く。共感があって初めて、心の会話ができるのです。
男性は、相手が守ってやりたい大切な存在であるほど、真正面から否定形で打ち返してしまうんですね。
どうでもいい相手が海外旅行に行くのなら、「ああ、いいね。行ってらっしゃい」と答えるのに、相手が娘だと真面目に考えて問題を指摘して安全をはかろうとする。それが裏目に出ているケースがほとんどです。これらをやめれば、対話がないという問題はほとんど解決します。