早稲田大学と慶應義塾大学の野球部が対戦する早慶戦といえば、東京六大学野球の華として人気が高く、その互角の勝負が100年以上続けられていることでも知られている。ところが、早稲田に比べて慶應はプロ野球入りすることに興味が薄いようだ。慶應OBで自身は巨人で活躍、引退後に慶應の監督もつとめた野球解説者の江藤省三氏に、慶應生が抱く野球への想いについて聞いた。
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慶應の選手は昔から、野球は大学4年間でやり切るという思いがあるように見えますね。
例えば1988年春に53イニングス無失点の大記録を作り、通算31勝を挙げた慶應の投手・志村亮は、9球団の誘いを受けながらプロには行きませんでした。ドラフト1位候補がプロ拒否するというのは、当時、社会問題にもなりました。他にもプロレベルだったのに、一般企業に進んだ選手はたくさんいます。
仮に卒業後にプロに入って、20年現役で引退しても40歳すぎ。そこからの人生のほうがはるかに長い。慶應の学生たちはそれを理解していて、だからこそ自分がプロで勝負するかどうか感情に流されずに自分を見極めることができるように思います。
私は長くプロの世界でお世話になりましたが、他の分野の人とはなかなか繋がれませんでした。必ずプロというわけではなく、社会へ出て見聞を広めたいと考える学生たちの思いは十分理解できます。
【プロフィール】
江藤省三(えとう・しょうぞう)/1942年熊本県生まれ。慶應大3年春から4季連続ベストナイン。1965年に巨人に入団。引退後、幾多の球団コーチを経て、2009年から慶應の監督に就任し、4年半で3度の優勝に導く。
■撮影/山崎力夫
※週刊ポスト2020年11月30日号