女優の柴咲コウが10歳の心を持つ女性を演じて話題の『35歳の少女』(日本テレビ系、毎週土曜22時)と、アメリカの作家によるSF小説の名作の共通点について、ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏が考察する。
* * *
久しぶりに地上波のドラマに主演する柴咲コウさんをガッチリと観ている。『35歳の少女』で、小学4年生で遭った交通事故から25年ぶりに目を覚ました少女の物語。見た目はアラフォー、精神は小学生というアンバランスな状態に戸惑いながらも、成長をしようとする時岡望美を演じている。
第5話(11月7日)の放送を終えて、望美は高校1年生ほどの知識や感覚を持つようになった。ただくどいようだけど、見た目は立派な35歳の女性である。この状態がいつか望希を苦しめることになるのだろうか、と予想をしながら見ていると、ふっと、二つの既視感を覚えた。
実年齢と精神年齢のギャップに戸惑う主人公
まずひとつ目は、名作『アルジャーノンに花束を』と内容が似ていること。ダニエル・キイスによる本作は、知的障害を持つ主人公のチャーリィ・ゴードンが試験的な手術により、高い知能を獲得していく小説だ。すべてチャーリィの一人称で書かれていて、最終的にまた彼が知的障害を持つ状態に戻っていくまでが描かれている。
世界中で、映画化、ドラマ化、舞台化がされて反響を呼んだ。ちなみに日本でも2002年にユースケ・サンタマリアさん(関西テレビ系)、2015年に山下智久さん主演(TBS系)でドラマ化されている。
チャーリィが高レベルの知能を得ることで、知らなくていいことも、たくさん知ってしまう。ひょっとしたら、手術を受けないほうが幸せだったのかもしれない、と様々な思索を巡らせる作品なのだ。そしてこの様子が『35歳の少女』の望美と重なった。