2020年9月中間決算(連結)で最終損益が2098億円と大幅な赤字に沈んだ三菱自動車。かつての主力車種「パジェロ」の生産を終了するなど車種構成も乏しくなる一方の同社だが、熱狂的な“三菱ファン”がいるのも事実。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、現ラインアップの中で最もデビュー時期が古い「デリカD:5」の改良モデルに試乗。その実力を評価した。
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創業以来最大の危機に陥っている三菱自動車。ルノー・日産アライアンスの傘下に入って再建を図っていたが、コロナショックでシナリオが狂い、欧州市場を捨てて最後の牙城である東南アジアを起点に再建を図るという方向にグローバル経営計画を修正せざるを得なくなった。
自動車ビジネスは先進国と新興国・発展途上国では商品戦略が大きく異なり、新興国向けのモデルを先進国市場に持ってきて売るという作戦は非常に難しい。三菱自動車はピックアップトラックベースの「パジェロスポーツ」や3列シートコンパクトミニバンの「エクスパンダ―」など、先進国市場への適合性が一見高そうなモデルを持っているが、「先進国の環境規制、お客様を満足させる機能、品質などを満たすのは困難」(三菱自動車関係者)であるという。
今年7月に公表した計画を見ても、日本市場でトピックとなりそうなのは2021年に中型SUV「アウトランダー」の新モデルを投入することとPHEV(プラグインハイブリッド)のラインアップを拡充することくらいで、それ以降も当分のあいだ現有モデルで危機を乗り越えなければならないという状況だ。
日本における三菱自動車のラインアップは旧態化が進んでいる。小型SUV「エクリプスクロス」は2018年と比較的新しいが、前述のアウトランダーとAセグメントミニカー「ミラージュ」が2012年、小型SUV「RVR」が2010年、ミニバン「デリカD:5」に至ってはリーマンショック前の2007年デビューである。
果たしてこのラインナップで難局を乗り切ることができるのだろうか──。感触を確かめるため、エンドユーザー向けの現有モデルの中で最もデビュー時期が古いデリカD:5を駆って、1400kmほどツーリングを行ってみた。