“最強馬”こそ不在だが、フルゲートに多士済々で激戦必至の第45回エリザベス女王杯。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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今年牡牝が一緒に走った平地芝GⅠは天皇賞秋まで8戦あったが、うち6戦で牝馬が勝っている。なので、いまさら牝馬限定GⅠに意味があるかという気もするが、「女王」と名がつく女の闘いは、また別物のようだ。
昨年まで1番人気馬が8連敗中(日本馬に限れば11連敗中)。前年に天皇賞(秋)を勝ったエアグルーヴ、3冠馬スティルインラブやアパパネ、ブエナビスタも勝てなかった。最近では2017年、秋華賞とドバイターフを勝っているヴィブロスが5着に沈んでいる。
とはいえ、波乱の決着ばかりということではない。1996年に3歳古馬混合戦になってからの24回のうち、1番人気馬は4勝のみだが、3番人気までが16勝でその単勝払戻金は最高でも880円。4、5番人気の勝ち馬も4頭中3頭が一桁オッズ。1~3番人気すべてが馬券圏外に敗れたことは1度もなく、連対しなかったのも2度だけ。8回は1~3番人気のワンツー決着。上位人気馬が互角の戦いをしているというのが基本の図式だ。
馬連の万馬券は、大逃げを打ったクィーンスプマンテとテイエムプリキュアにブエナビスタがクビ差届かなかった2009年と、単勝61倍のルメール騎乗シングウィズジョイをゴール直前でM・デムーロのクイーンズリングがとらえた2016年の2回だけ。
一方、三連単は1番人気が勝った2回をのぞけば万馬券となっているので、ことさら穴狙いを意識する必要はないのかもしれない。ただし、ここ5年、6番人気以下の馬が連対していることは覚えておきたい。
連覇を目指すラッキーライラックは今春大阪杯で勝利、GⅠ3勝目をあげ、今回も中心視されている。ノームコアは札幌記念、センテリュオもオールカマーと、いずれも前走はGⅡで牡馬を下しているが、この2頭は、牝馬限定戦より、牡馬と走ったレースで結果を出している。サトノガーネット、シャドウディーヴァ、リュヌルージュ、ロザグラウカは勝ち星のすべてが牡馬混合戦。男勝りの牝馬たちだ。
しかし、ここ4年はいずれも牝馬路線から参戦した馬のワンツー決着。というより、8頭中7頭が府中牝馬Sからの参戦。出走68頭のうち、24頭がこのローテーションだ。あと1頭は秋華賞経由で2017年の「女王」となった3歳馬モズカッチャンだ。2015年こそオールカマーから参戦した2頭のワンツーだったが、2017年などは前走が京都大賞典1着馬とオールカマー1着馬がともに馬券圏外に敗れている(もっともこの年は秋華賞、府中牝馬S1着馬も勝てていないが)。
近年の秋GⅠは、ひと叩きすることなくぶっつけで臨む馬が多くなった。デアリングタクトはオークス以来だったし、天皇賞(秋)は1着から4着までがすべて中4か月以上。しかし、11月半ばに行なわれるこのレースは、やはり1度使った馬が結果を出している。