誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、馬券購入と相性が悪いジョッキーについてお届けする。
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グリーンチャンネルのパドック解説が愉快だ。これを煩わしいからとミュートする友人もいるけど、私は耳をかたむける。時に珍論が飛びだし、こちらの頬をゆるめてくれる。
「どっしりとして落ちついた周回ですが、もう少し素軽さがあるといい」って、どういうこっちゃ。「いい状態ならば、力を出せる」って、その状態を伝えるのがパドック解説ちゃうんかい。「この馬、活気のようなものがもう少しほしい」という、綿アメの天ぷらのようなたよりない表現。声をあげて笑ったのが「ここを目標に仕上げすぎたようで、カリカリしている」。仕上げすぎちゃあかんのか! 蟄居競馬のせいでひとりツッコミが常態化してしまった。
こんな感じで土日はパソコンにへばりついているわけだが、ある昼休み、以前にも書いたClub JRA-Netを久しぶりに覗いてみた。投票成績照会の騎手別成績一覧が面白く、回収率によって棒グラフが伸びている。「このジョッキー、意外に相性いいなあ」なんて一目で分かるのだった。たとえば浜中俊騎手ならば103レース購入して23回的中。回収率94%である。的中率はまあまあなので回収率を上げたい。ファクトとして具体的数字を把握できるところがいい。
ここで目を丸くした。グラフの一か所が、ビル群に囲まれた平屋のように、いや空き地のごとく陥没している。回収率0%。35回購入、投入金額はン万円。ただの一度も当たっていない。これがリーディング上位常連のジョッキーなのである。ワイドにも絡んでいない。ホンマかいな、とつぶやいてしまったのだった。