「世論調査と同じく、開票所には新聞社やテレビ局の記者、調査員がかなりの数配置され、集計数を逐一チェックしています」
こう話すのは、在阪の全国紙記者。今回の「都構想」投票の取材でも、とある開票所を訪れている。
「NHKや大手新聞は、いち早く『確実』情報を出せるか、しのぎを削っています。私は双眼鏡で開票作業員の手元を見て、誰々の票が何票ずつ束にされ、数えられていくかをチェックする『束読み』をやりました。これをすることで、公式な集計より早く、おおよその得票数をはじき出せます。情報はすぐに選挙取材本部に送られ集計され、独自の情報として報じられます」(在阪全国紙記者)
万一でも「確実」情報がひっくり返されては社の威信に関わるため、記者や調査員はまさに命がけだという。だからこそ、選挙のたびに飛び交う「ウワサ」には辟易しているようだ。
「出口調査も開票作業も、現場を一度でも見ていれば、インチキなんかが通用しないことはわかると思います。異なる意見が受け入れられるのが納得いかない気持ちはわかりますが……あまりにも世間知らずに思えて、反論する気にもなれません」(在阪全国紙記者)
物事を判断する時、情報が多ければ多いほど良いと人は思う。しかしその情報が多すぎて自身の処理能力を超えた時、人は考えを止める。さらに、それらフロー情報から、自分の好みのものだけを拾い集める。この時集められた情報の「正しさ」は怪しく、人を盲信的、狂信的にさせる材料にしかならない。これらの怪しい情報は、混乱を狙った第三者によって一方的に送られている場合もある。実際に、今回のアメリカ大統領選挙の直前にも、ロシア、中国、イランのハッカーが執拗に攻撃しているとマイクロソフトの研究者たちが報告し、アメリカ財務省はロシアによる虚偽の情報流布に関わったロシア人3人への制裁措置を発表している。こういった現実があるにも関わらず、わざと大量の怪しい情報をネットに流しているグループがいるのだという考え方ですら、一部の人からは「陰謀論だ」と攻撃される。情報伝達手段の発達とともに、人々の情報処理能力が低下してしまってはいないか、そう思えてならない。
そしてまた、次の選挙では様々な「ウワサ」がまたぞろ飛び交うのであろう。