疲労回復に効果があるミネラルを豊富に含むことから、夏バテ防止の冷たい飲み物として老若男女に広く定着している「麦茶」。市場調査会社の富士経済によると、主にペットボトル入りで販売されている麦茶の市場規模(販売量ベース)は、2009年からの10年間でじつに4.5倍以上にも増えている。
直近の2019年は冷夏によって需要が減少したものの、通年で見ると対前年比でプラスに着地したことから、富士経済では〈麦茶は夏場の需要だけでなく、通年商材としてのポジションを確立したことを証明した〉と分析している。つまり、麦茶は冬でも緑茶同様に飲まれているというのだ。
そこで出てくるのが、「麦茶をホットで飲む人も増えているのか?」という疑問。近年、焙じ茶やジャスミン茶など香りが強い無糖茶飲料はブームにも乗り、コンビニ等では冬場のホット商品も多数並んでいるが、麦茶はあまり見かけない。やはり、麦茶は暑い夏にキンキンに冷やしてゴクゴク飲むイメージのほうが強い。
だが、今年から主力商品の『GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶』にホット専用のペットボトル商品『やさしい温麦茶』(500ml/税別130円)を加えて冬場の需要喚起を狙っているのが、サントリー食品インターナショナルだ。
同社ブランド開発事業部の光星晴信氏に話を聞いてみると、飲料メーカーの担当者でさえ、最初はホット麦茶がどれほど支持されるのか半信半疑だったという。
「私も麦茶は冷やしたほうが美味しいという思い込みがあったので、これまでは短い夏場にいかにたくさん売るかしか頭にありませんでした。でも、よくよくお客様の意見を調査してみると、特に女性から『子どもとも一緒に飲めるノンカフェインの飲料で温まりたい』とか、『緑茶はどうも苦いから、秋や冬も麦茶をホットで飲んでいる』という声が多くあることが分かりました」(光星氏)
沸騰したお湯に麦茶のティーバッグを煮だして飲んでいた経験のある人なら、ホット麦茶の味わいも知っているだろうが、「それは40代以上の方で、いまの20代、30代の人たちは水出しの冷たい麦茶しか飲んだことがない人も多い」(同社広報担当者)という。ホット麦茶はそんな若年層の潜在需要も掘り起こせるチャンスなのだ。