かつては民放で視聴率トップの座を走っていたフジテレビの低迷が続いている。そんななか、復活を目指す動きが「木曜夜」から始まっている。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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フジテレビは今秋の番組改編で、木曜21時から『千鳥のクセがスゴイいネタGP』をレギュラー化。発表時は、「今年5月30日と8月15日に放送されたばかりの特番を早くもレギュラー化したこと」が驚きを持って報じられました。
また、同番組に続く木曜22時からのドラマには『ルパンの娘』をラインナップ。こちらは昨夏に放送されたドラマの続編であり、同枠では2014年春の『続・最後から二番目の恋』以来となるひさびさのシリーズ作です。
「特番を早くもレギュラー化」「6年半ぶりのシリーズ作」であること以上に異例なのは、両作の視聴率が振るわなかったこと。『千鳥のクセがスゴいネタGP』は5月30日が個人視聴率4.2%、世帯視聴率6.4%、8月15日が個人視聴率5.3%、世帯視聴率8.2%。『ルパンの娘』が個人視聴率4%程度、世帯視聴率7%程度に終わりました。
テレビ局によって違いはありますが、業界的に「現在の合格ライン」と言われる個人視聴率6%、世帯視聴率10%を大きく下回っているにもかかわらず、フジテレビがレギュラー化や続編放送を決めたのはなぜでしょうか。
その理由にこそ、フジテレビの大きな変化と、復活の兆しを感じるのです。
低視聴率でもレギュラー化した理由
視聴率という結果が得られなかったにも関わらず、なぜ両番組は今秋に放送されているのか。最大の理由は、フジテレビが“キー特性”と呼んでいる13~49歳の視聴者層を重視しはじめたから。『千鳥のクセがスゴいネタGP』と『ルパンの娘』は、前述したように各世代を合計した視聴率では奮わないものの、キー特性の視聴率で評価されたことが今秋のレギュラー化や続編につながったのです。
この背景となったのは、今春に行われた視聴率調査のリニューアル。年齢性別ごとの細かい視聴データが取れるようになり、スポンサーが本当に求める視聴者層へのアプローチが可能になったことが両番組を後押しする形になりました。
そこにさらなる影響を及ぼしたのが、コロナ禍による業績の悪化。これまで以上に「スポンサーが本当に求める視聴者層を確保しなければいけない」という切迫した状況になり、その対策がキー特性向けの番組なのです。とはいえ、これまでのフジテレビなら視聴率の取れない番組のレギュラー化や続編は考えられなかっただけに、大きな変化であることは間違いありません。
しかも『千鳥のクセがスゴいネタGP』も『ルパンの娘』も、「視聴者を笑わせるための強烈なネタと、濃いキャラクターを楽しむ番組」という共通点がありました。今夏は木曜21時台に『直撃!シンソウ坂上』、22時台に『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』というドキュメント要素の強い番組が放送されていたことを踏まえると、笑いがテーマの番組にガラッと変わったことがわかるのではないでしょうか。
今秋の変化でフジテレビの木曜夜は、21時台の『千鳥のクセがスゴいネタGP』、22時台の『ルパンの娘』、さらに23時台の『アウト×デラックス』までの2時間40分間、笑いあふれる番組編成になりました。かつてフジテレビは「楽しくなければテレビじゃない」というコピーの通り、笑い重視の番組を連発していましたが、そんなかつての姿を思い出させるものがあるのです。