白鵬、鶴竜の両横綱不在で始まった大相撲11月場所は、朝乃山と正代の2大関まで途中休場となり、土俵は盛り上がりに欠けている。ただし、観客は先場所に比べて“倍増”した。9月場所は両国国技館(1万1098人収容)の観客数の上限を2500人としていたが、今場所から5000人に緩和されたからだ。4人席の桝席に1人だけが座っていた状態が、2人ずつに変わり、見た目には本場所らしくなってきた。そして、今場所は今までになかった新たな“イベント”も生まれた。打ち出し後に行なわれる「お楽しみ抽選会」だ。
通常、結びの一番が終わると、弓取式が行なわれ、打ち出しとなる。午後6時で放送終了するNHKの相撲中継で映るのはここまでだが、今場所は、その後に若手親方や呼び出しが土俵周りに集まってくる。
呼び出しのひとりがマイクを持って、「お楽しみ抽選会を行ないます。席を立たないでくださいね。人気力士の直筆の手形、グッズなどが入ったお楽しみ袋をプレゼントします」とアナウンス。
このイベントには、退場時の「密」を避ける狙いがあるという。くじ引きの当選者は座席番号で発表されるが、まず正面の席から5人、続いて向正面、西、東から各5人と時間帯を分けて抽選することで、5000人に増えた観客が自然と“分散退場”するというわけだ。
マイクを持った呼び出しは、「時差をもって退場いただく間、飽きないようにするためのお楽しみ抽選会です。絶対に喜んでもらえる商品が当たるので、今しばらくお待ちください」と続ける。土俵周りには、今年3月に引退し、まだ頭に髷が乗っている井筒親方(元関脇・豊ノ島)らの姿もある。