近頃、繊細すぎる人を指す「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」という言葉をは、日本ではこの1~2年で急激に注目されるようになり、HSPを扱った書籍『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)の売り上げは45万部を突破。芸能界でもベッキー(36才)や要潤(39才)、ロンドンブーツ1号2号の田村淳(46才)などが「自分はHSP」と次々に名乗り出るなど、ちょっとした社会現象になっている。
HSPが増加する背景について、精神科医の片田珠美さんが言う。
「心理状態や性格傾向に名前がつけられると、『自分もそうではないか』と思う人が増える傾向にあります。特にHSPはメディアで取り上げられて認知度が上がったことで、急増しているフシがあります。5人に1人がその気質を持っているとされますが、自称している人の全員が本当にそんなに繊細なのか疑問です。
ではなぜそう言いたがるのか。それは、現代の世の中を生きづらいと感じ、その理由をどこかに求めたいから。例えば会社や学校、家庭でうまくいかないとき、自分に能力や努力が足りないせいと考えれば、自己愛が傷ついてしまう。だから、それより、『自分が繊細すぎるからだ』と考えた方が納得しやすいのです」
さらに、HSP増加を後押しするのが、“繊細”という言葉が持つイメージだ。
「特に女性は『あの人、鈍感よね』が悪口になる。鈍感よりは繊細な方がカッコイイという価値観があるのでしょう。同様に、英仏で結核が流行した19世紀当時、若くしてはかなく死ぬのが美しいという風潮が特に芸術家の間で生まれました」(片田さん)
しかし、こうした状況の陰で「繊細でない人」が困惑しているのもまた事実。HSPが増えるに従い、こんな弊害も生まれている。
「“繊細だから”を盾に、職場などで特別扱いを求める人も増えており、上司が少し注意しただけでへそを曲げて出社しなくなる部下もいます」(片田さん)
精神科医でハタイクリニック院長の西脇俊二さんは、繊細な人とその周りの人が共存するためにこんなアドバイスを送る。
「他人のふるまいにがっかりしたら、“私は過度な期待を相手にしていただけ”と認識すること。期待するのをやめると気持ちが楽になり前向きになれます。“大人の塗り絵”のような無心で取り組める趣味を見つけることも大切。脳がリラックスして、ストレスが緩和されます」