定年後の「働き方」の選択次第では負け組に転落するか、踏みとどまれるか、大きく違ってくる。最もリスクが高い選択だといわれるのが、定年後にフリーランス(自営業)や業務委託の道を選ぶケースだ。
定年後に雇用延長で社員として働いた場合、在職老齢年金の制度で年金をカットされる仕組みがある。しかし、フリーランスとして会社から仕事を外注(業務委託契約)してもらえば、同じ収入を得ても年金は減らされない。そのため、コロナ前は定年後の「得する働き方」ともてはやされた。しかし、コロナで事情は変わった。人事ジャーナリスト・溝上憲文氏が指摘する。
「政府もフリーランスの働き方を増やそうとしてきた。しかし、企業は業績が悪化すると真っ先に外注を切る。今回も、業務委託で働いていた人の多くが最初に仕事を失った。国が個人事業主に持続化給付金を出すという過去に例のない対応をとったのもそれだけ悲惨な状況だからです。保守的な選択ではあっても、定年後は社員として残ったほうが生活は守りやすい」
次に「派遣切り」や「雇い止め」などでクビを切られたのが非正規社員だ。厚労省はコロナ解雇や雇い止めが10月までに約7万人と発表したが、現実は桁が違う。
総務省の労働力調査から全産業の正規社員と非正規社員の人数(55歳以上)の増減を比較するとその格差がよくわかる。
それによると正規社員の数はこの2年間、ほぼ安定して増えているのに対し、派遣社員や契約社員など非正規社員の数はコロナ感染が拡大した今年4月からガクンと減った。9月には前年同月比で30万人以上も減少している。企業が非正規社員から減らしたことが読み取れる。