孫がやっている漢字ドリルを覗き込む祖父。したり顔で「ここの読み方間違ってるぞ」と口を出すと、「いや、先生からこう習ったから」とぴしゃり──2人の「正解」はなぜ違ってしまったのだろう。
同じことが、“読みのプロ”であるテレビのアナウンサー同士でも起きた。日本テレビの市來玲奈アナ(24)が夕方の情報番組『news every.』(10月6日放送)で、「重用」の語を「じゅうよう」と読んだところ、同番組メインキャスターの藤井貴彦アナ(48)が「ちょうよう」と横から間違いを指摘。
市來アナはその場で言い直したが、さらにその数分後、藤井アナが「実は『じゅうよう』のほうが新しくて、私の知識のほうが古かった」と、放送中に謝罪する事態に発展した。
“読み間違い”が定着
時代とともに読み方が変わる漢字や熟語は意外と多い。そもそも、人々が“正しい読み方”の拠り所とする辞書の見出しは誰がどのように決めるのか。
日本語学者で辞書編纂者を務める飯間浩明氏が解説する。
「辞書の見出しは、基本的に、現在一般的だと判断される読み方を私たち編纂者が採用しています。その中には、古くからずっと使われてきた読み方もあれば、わりあい新しい時代に生まれた読み方もあります。元は読み誤りや勘違いから生まれた読み方でも、いつしか多くの人に使われ、慣用的な読みとして定着することもあります。
辞書編纂者はまず、漢字の振り仮名や、テレビ・動画の音声などといった実例を広く集めます。その結果、新しい読み方でも、慣用として定着していると判断すれば、新規に見出しに加えることになる」